「どうせ誰かが払ってくれるわ」
冷川廷深は手近な白いドレスを取り上げ、金田鎖の前に当ててみた。
「鎖さん、これを試着してみてはどうですか?あなたにとても似合うと思いますよ」
「結構です。私は白が好きではないので」
金田鎖は位置を変え、林悠の後ろに立ち、よそよそしい態度を取った。
林悠は知っていた。金田鎖が白色を嫌っているのではなく、冷川廷深という人物が嫌いなのだと。
しかし、彼女は冷川廷深の目利きには感心していた。彼は金田鎖に初めて会ったのに、彼女にぴったりの服を選ぶことができるなんて、本当に凄いと思った。
彼女は自ら冷川廷深に尋ねた。「おじさま、さっきの阿部さんはどうしたの?」
「根性なしだよ。骨を数本投げてやったら帰っていったさ」
冷川廷深のこの言葉は、金田鎖に取り入ろうとしているように聞こえた。