「林さん!」突然、後ろから声がした。
林悠が振り返ると、古い屋敷の大門が開き、お爺さんの介護士が入り口に立っていた。
「林さん、お爺様があなたを上に呼んでいます」介護士が出てきて、林悠が持ってきた絵を受け取った。
林悠はすぐに涙を拭き、介護士について中に入った。すると、リビングで林美芝も見かけた。
彼女は林美芝を無視し、陣内冷子に小声で言った。「お爺さんと少し話してくるわ、すぐに帰るから」
冷川お爺さんの状態はあまり良くなさそうで、全体的に疲れているように見えた。林悠を見ると、すぐに笑顔を浮かべた。
「お爺さん!」林悠は心配そうに近づいた。「最近どう?顔色がとても悪いわ」
「大丈夫だよ、お爺さんは元気だ」冷川お爺さんは無理に笑顔を作った。「左手で絵が描けるようになったのか?」
「うん」林悠はうなずいた。「もう仕事も始めたわ」
彼女は持ってきた絵を開いて、冷川お爺さんに見せた。「お爺さん、これはあなたの夢の中の景色?」
冷川お爺さんの目は感動で輝き、しばらくしてから力強くうなずいた。「そうだ、うちの島子は本当に上手だね。ありがとう、島子」
「違うわ、お爺さん」林悠は首を振った。「私こそお爺さんに感謝しなきゃ。お爺さんがいなかったら、きっと絵を諦めていたわ」
「バカな子だ!」冷川お爺さんは愛情を込めて林悠を見つめた。
二人はたくさん話したが、お互い暗黙の了解で冷川宴のことや離婚の話題には触れなかった。
昼近くになると、林美芝がドアをノックして入ってきた。「お爺さんの注射の時間です」
林悠はそれを見て、すぐに立ち上がって帰る準備をした。「お爺さん、じゃあ先に帰るね。体に気をつけて…」
「島子」意外にも、林美芝は薬箱を林悠に渡した。「介護士と一緒にやってみて。彼女が薬を持つのを手伝って、間違えないように見ていてくれればいいわ」
「ああ、わかった」林悠はうなずいた。もちろん、お爺さんともう少し一緒にいたかった。
彼女は介護士にどんな薬を打つのか詳しく尋ねた。意外にも、お爺さんは一日に何本も注射が必要だった。
介護士はまずお爺さんの血糖値をチェックし、少し高いことがわかると、林悠に指示した。「後でインスリンを一本、黄色いやつを取ってくれる?」
「はい」林悠はうなずき、振り返ると林美芝がまだいて、少し緊張した。