第165章 林悠が躊躇いながら「お父さん」と呼んだ

金田鎖と冷川峰は顔を見合わせた。

「安心してください、彼女を起こしたりしません」林深の口調には哀願するような響きがあった。

金田鎖はその瞬間、胸を打たれた。今目の前にいる林深は、まさに愛する人を失ったばかりの老父親であり、中にいるのは彼の娘だった。

たとえ林深が真実を知らなくても、彼女には二人の関係を妨げる権利はなかった。

「わかりました、林おじさん、どうぞお入りください。私たちは外で待っています。何か必要なことがあれば、呼んでください」

林深はうなずき、ドアを開けて中に入った。

近づいてみると、確かにその子の目尻は湿っており、枕にも小さな涙の跡があった。

林深は理由もなく胸が痛み、懐から小さなハンカチを取り出し、そっと林悠の涙を拭いてあげた。

病室の外で、金田鎖と冷川峰はその光景を見て、二人とも鼻の奥がつんとした。