翌日の朝早く、林悠はタラ本社へ向かった。
そこは特に美しく、デザイン性に溢れ、出入りする人々もみなファッショニスタで、ファッション界のデザインの都としての風格を存分に示していた。
林悠の案内役も中国人で、新田露美子という名前だった。林悠よりも少し背が高く、清楚な亜麻色のショートヘアで、性格は非常に明るそうだった。
「ようこそ、林悠さん。私はずっとあなたのファンなんです」と会うなり大きなハグをしてきた。
林悠は思わず驚いた。「ファン?」
新田露美子はうなずいた。「そうですよ。あなたのあの数点の作品、特に『島』は大好きなんです」
林悠は少し戸惑った。新田露美子が言っているのは林美芝が彼女から盗作した作品のことだった。タラ本社の人々もそのことを知っているとは思わなかった。