翌日の朝早く、林悠はタラ本社へ向かった。
そこは特に美しく、デザイン性に溢れ、出入りする人々もみなファッショニスタで、ファッション界のデザインの都としての風格を存分に示していた。
林悠の案内役も中国人で、新田露美子という名前だった。林悠よりも少し背が高く、清楚な亜麻色のショートヘアで、性格は非常に明るそうだった。
「ようこそ、林悠さん。私はずっとあなたのファンなんです」と会うなり大きなハグをしてきた。
林悠は思わず驚いた。「ファン?」
新田露美子はうなずいた。「そうですよ。あなたのあの数点の作品、特に『島』は大好きなんです」
林悠は少し戸惑った。新田露美子が言っているのは林美芝が彼女から盗作した作品のことだった。タラ本社の人々もそのことを知っているとは思わなかった。
彼女は軽く微笑んだ。「ありがとうございます」
「いいえ、当然の評価です。ある人のように...」新田露美子は口をとがらせた。「泥棒じゃないですから」
彼女はさらに林悠の耳元で言った。「私は前から林美芝が気に入らなかったんです。あなたのやったことは素晴らしかった」
「私を信じてくれてありがとう。残念ながらミューズ賞の人たちは認めてくれなかったけど」林悠は口角を引きつらせた。「あなたは林美芝を知っているの?」
「ミューズの方は金で動いているんです。林美芝は500万も払ったんですよ。こちらの人はみんな知っています」新田露美子は軽蔑した表情で言った。「知っていますよ。彼女がこちらに来たばかりの頃、私たちはしばらく友達だったんです」
彼女は両目を刺すような仕草をした。「あの頃の私は目が見えていなかったんです」
当時は林美芝がお金でこの件を解決していたのだと知り、林悠の気持ちは少し楽になった。
彼女はますますこの新田露美子という人を気に入った。
二人はタラを一周し、林悠はCEOとデザインディレクターにも会い、この一日がようやく終わった。
彼女はくたくたになっていた。こんなに長時間外を歩き回るのは久しぶりだった。
タラは彼女に宿泊先を手配してくれた。新田露美子と一緒で、この3ヶ月間は無料で滞在できる。
会社を出た後、二人は一緒にホテルへ行って荷物を取り、それから住居へ向かった。