林悠が去った後、澤田楠雄は美智を呼び戻した。
「島子おばさん、帰っちゃったの?」小さな美智は好奇心いっぱいに尋ねた。
「うん、休みに帰ったよ」澤田楠雄は小さな子の頭を撫でながら言った。「美智は島子おばさんが好きなの?」
「うん、島子おばさんはとても優しくて、美智にもすごく良くしてくれる」小さな美智はまた好奇心から澤田楠雄に尋ねた。「パパは?パパも島子おばさんのこと好きでしょ?」
「え?」澤田楠雄は一瞬戸惑った。「美智はどうしてそう思うの?」
小さな美智は答えず、ソファに登り、近くの本棚から埃をかぶった本を取り出した。
澤田楠雄は眉をひそめた。
美智は本の埃を拭き取り、本を抱えて澤田楠雄の隣に座り、開いてみると、中に一枚の写真が挟まれていた。
写真には青空と白い雲、緑の草原、そして走り回る人々の姿があった。その中で唯一はっきりと写っている顔は、林悠のものだった。