林悠が去った後、澤田楠雄は美智を呼び戻した。
「島子おばさん、帰っちゃったの?」小さな美智は好奇心いっぱいに尋ねた。
「うん、休みに帰ったよ」澤田楠雄は小さな子の頭を撫でながら言った。「美智は島子おばさんが好きなの?」
「うん、島子おばさんはとても優しくて、美智にもすごく良くしてくれる」小さな美智はまた好奇心から澤田楠雄に尋ねた。「パパは?パパも島子おばさんのこと好きでしょ?」
「え?」澤田楠雄は一瞬戸惑った。「美智はどうしてそう思うの?」
小さな美智は答えず、ソファに登り、近くの本棚から埃をかぶった本を取り出した。
澤田楠雄は眉をひそめた。
美智は本の埃を拭き取り、本を抱えて澤田楠雄の隣に座り、開いてみると、中に一枚の写真が挟まれていた。
写真には青空と白い雲、緑の草原、そして走り回る人々の姿があった。その中で唯一はっきりと写っている顔は、林悠のものだった。
小さな美智は顔を上げて澤田楠雄を見つめ、褒められるのを待っていた。
彼女が初めて島子おばさんに会った時、どこかで見たことがあるような気がしたが、どこで見たのか思い出せなかった。数日前にようやく思い出したのだ。
彼女はずっと写真を取り出して確認する機会を探していて、今やっとチャンスが来たのだ。
澤田楠雄は何も言わず、ぼんやりと写真を手に取り、じっくりと見つめた。
写真の中で唯一はっきりと写っている顔は確かに林悠のもので、写真も彼が撮ったものだった。
澤田楠雄はあの頃の気持ちを思い出した。もし冷川宴がいなければ、彼が最初に気になった女性は林悠だったかもしれない。しかし現実は常に残酷で、彼が林悠のことを調べた時、最初に得た情報は、林悠が冷川宴の女だということだった。
彼がどうして手を出せただろうか?考えることさえできなかった!
澤田楠雄は写真を本に戻し、「美智、これは私たちだけの秘密だよ、いい?誰にも言っちゃダメだよ。島子おばさんにも、ママにもね」
「うん」小さな子は頷いて同意した。
「さあ、服を着替えて、パパがハンバーガーを食べに連れて行ってあげるよ」澤田楠雄は笑顔で言った。
「本当に?」小さな子はとても喜び、すぐに飛び跳ねながら着替えに行った。
澤田楠雄は林悠の提案を受け入れた。もし計画が成功すれば、美智はすぐに林美芝のもとへ送られることになる。