第367章 お兄ちゃん、これはママよ

林悠が予寧を幼稚園に送った後、再び展示会の会場へ向かった。昨日帰宅してから、彼女はいくつか新しいアイデアを思いついていた。

彼女はこの展示会を名古屋での足がかりとなる重要な戦いだと考えていたので、非常に熱心に取り組んでいた。

バルイの方では相変わらず晴山天人が林悠を出迎えた。「林さん、昨日うちの周防部長がおっしゃっていましたよ。ぜひ直接お会いしたいと」

「ぜひお願いします」林悠はとても嬉しそうだった。「私もずっと周防部長にお会いしたいと思っていました。今回出展できるのは、私たち心島設計の光栄です」

「そんなことおっしゃらないでください。うちの部長は本当に林さんの作品がお気に入りで、自分の憧れる方の作風に似ていると言っていましたよ」晴山は笑いながら言った。「それでは後ほど忙しいことが一段落したら、部長のところへご案内してもよろしいですか?」

「もちろんです」林悠はさっぱりと承諾した。

二人は前後して半日ほど忙しく働き、ようやく一段落ついた。

「行きましょうか、林さん。今から部長のところへご案内します」晴山が率先して言った。

「はい」林悠は自分の荷物を手に取り、ちょうど晴山と一緒に行こうとしたとき、電話が鳴った。岡田詩織からだった。

彼女は遅れるわけにはいかず、急いで晴山に一言断ってから、脇に行って電話に出た。「もしもし、岡田先生、こんにちは。林悠です。予寧の...」

向こうの岡田詩織が急いで彼女の言葉を遮った。「林さん、すぐに来てください。予寧がケガをしました」

「え?」林悠の顔色が一瞬で真っ青になった。「わかりました、すぐに行きます」

彼女は電話を切るとすぐに晴山に言った。「申し訳ありません、娘に何かあったようで、すぐに幼稚園に行かなければなりません。今日は...」

「大丈夫ですよ、林さん。急いでいってください。部長も理解してくれますから」晴山は彼女があわてている様子を見て、引き止める勇気はなかった。

「本当に申し訳ありません」林悠は急いで外に出てタクシーを拾った。

幼稚園では、すでに大混乱になっていた。

予寧の手が切れて、血が止まらなかった。彼女は椅子に座っていたが、泣いてはおらず、むしろ自分の前に立ちはだかる小さな男の子を見上げていた。