夕方になって、林悠は深田確からの電話を受けた。
「島子、今日は私が予寧を迎えに行くから、あなたはそちらが終わったら直接家に帰ってきていいよ。」
「うん、ちょうどこっちでまだ少し仕事が残ってるから、終わったら帰るね。」林悠は電話を切ると、また忙しく仕事に戻った。
深田確は幼稚園に行き、門の前で少し待つと、子供たちの下校時間になった。
「パパ、どうしてここに来たの?」予寧は走り出てきて、迎えに来た人がパパだと分かると、とても嬉しそうだった。
予寧の後ろについてきた予安は、来た人がママではないことを見て、明らかに不機嫌そうだった。
「ママはまだ忙しいから、今日はパパがお迎えに来たんだよ。」深田確は小さな子を抱き上げ、そこに立っている予安を見た。「予安、パパはまだ迎えに来てないの?」
予安は何も言わなかった。
「冷川おじさんはとても忙しいから、いつも最後に来るの。」予寧は深田確の首に腕を回し、兄の代わりに答えた。
「そうなんだ、じゃあ、兄さんと一緒に少し待ってみる?」深田確は予寧の意見を聞いた。
「いらない。」予安はようやく口を開き、予寧に手を振った。「妹、さようなら!」
そう言うと、小さな子は教室に戻ってしまった。明らかに深田確とあまり話したくないようだった。
「パパ、家に帰ろう。」予寧はパパの表情を注意深く観察し、パパが兄に怒っていないか心配していた。
「うん。」深田確は気にせず微笑み、小さな子を抱いてタクシーで帰った。
道中、予寧は自ら説明した。「パパ、お兄ちゃんは自閉症なの。わざとパパを無視してるわけじゃないから、怒らないでね。」
「パパは知ってるよ、パパは怒ってないよ。」深田確は優しく小さな子の二つのポニーテールを整えた。「それに、パパは冷川おじさんに約束したんだ、お兄ちゃんの自閉症を治すために全力を尽くすって。」
「本当?やった!」予寧は嬉しそうに手を叩いた。「パパ、すごい!お兄ちゃんもきっとパパのこと好きになるよ。」
深田確は口元を引き締め、小さな子の言葉に同意しなかった。予安に自分のことを好きになってもらうのは簡単なことではないと知っていたからだ。
一方、冷川宴は車に乗るとすぐに予安が膨れっ面をしていることに気づいた。どうやら不機嫌なようだった。