第493章 これは記憶それとも彼女の性的妄想

男は上半身裸で、下半身にはバスタオルを巻いていた。引き締まった腹筋はセクシーで力強く、魅惑的な人魚線が腰の辺りで消えていた。

冷川宴は片手で髪の水を拭っていた。元々少し俯いていたが、空気の中の何かしらの変化に気づいた時、彼はゆっくりと顔を上げた。

二人の視線が合い、林悠は瞬時に身を翻した。

「私……深田確さんがあなたは潔癖症だと言って、新しい寝具に替えるように言われたの。」彼女はどもりながら説明した。

「何の潔癖症だよ、」冷川宴は低く笑った。そういった癖は海上での一年で、すっかり消えてしまっていた。それでも彼は礼を言った。「ありがとう。」

「じゃあ……」林悠は依然として彼に背を向けたまま、指で後ろを指した。

「ああ、自分で敷くから大丈夫だよ、ありがとう。」冷川宴は慌てて逃げ出す林悠を見ていた。

林悠は直接トイレに行き、冷水で顔を洗った。不思議なことに、先ほどの光景が頭から離れなかった。

彼女は自分の頬を強く叩きながらも、心の中で思わず疑問を抱いた。冷川宴のような普段オフィスに座っている大社長は、白くて痩せているはずじゃないの?

彼女の脳裏にはいくつかの映像が浮かんだ。やはり胸筋と人魚線で、ある男性の体が自分に迫ってくる。でもその人の肌は自分よりも白かった。

林悠は強く頭を振った。その映像はすぐに消えた。あれは自分の過去の記憶?それとも……半裸の冷川宴を見た後に生まれた性的幻想?

彼女は恥ずかしさで顔を上げられず、急いでもう一度顔を洗ってから、部屋に戻った。

二人の子供たちはすでに眠っていて、須崎文恵は彼女を待っているようだった。「冷川さんの準備はできた?」

「うん。」林悠は微笑んだ。「寝具を持っていったら、彼が自分で敷いたわ。先生、早く休んでください。」

「島子、」須崎文恵の声には特別な力があり、人を安心させる。「前にも言ったけど、深田確が回復したら、もし記憶を取り戻したいなら、私が手伝えるわ。」

「はい、ありがとうございます、先生。」林悠は感謝の気持ちを表した。「よく考えてみます。」

翌日、一同は予安と予寧を幼稚園に送った後、深田万山が収容されている場所へ向かった。

それは郊外の別荘だった。

深田確は思わず笑った。「これは……大げさすぎないか?」