第116章(最初の文を見てください)君少は不機嫌

(今日の更新は正午に公開されます。皆さん、正午にお越しください~~~~週末なので、追加更新があります、ムチュッ)

【羨ましい...】

【なぜ私じゃないの、星辰万里を投げられないからって?】

【あの人は句点一つで上位に入れるのに、私は二十文字も書いて配信者を褒めても駄目なんて、失礼します。】

【うぅぅぅ】

配信ルームには涙を流す顔文字が画面いっぱいに流れていた。その全ての原因は、画面上の一時停止画面にあった。

「升:。」

画面の向こう側で、両足をベランダに乗せ、怠そうに赤ワインを一杯飲んでいた宣升は、配信ルームで自分の名前を見て、とても驚いた。

「ユーザー名が升の視聴者の方、配信ルームでリクエストをお願いします。」

夏挽沅の言葉が終わると、配信ルームには一つのコメントが現れた。やはり一文字だけ。

「你(あなた)」

書斎の中で、この奇妙なコメントを見ていた君時陵は眉をひそめた。

「もう少し具体的にお願いできますか?」夏挽沅も不思議に思った。

「随意(自由に)」ユーザー升はまた一つのコメントを送った。今回も二文字を超えなかった。

挽沅は心の中で疑問に思いながらも、すでに抽選したからには続けなければならない。

多くの制約がなくなり、挽沅は心のままに、流れる水と虫の音に合わせて、自分自身を琴の音色に没頭させた。

以前、夏朝では、挽沅に琴の技術を教えていたのは当時非常に有名な天音大師だった。

天音大師には奇妙な習慣があった。彼は琴の音と歌声が合わさることを好まなかった。彼は高度な琴の音色だけで、心の全てを表現できると考えていた。挽沅は彼に習い、天音大師ほど頑固ではなかったが、その習慣を身につけていた。

今、視聴者からの特別なリクエストがなかったので、挽沅はただ琴を弾くだけで歌詞をつけないことにした。

今の琴の音色は先ほどよりもずっと柔らかくなっていた。

先ほどが激しい風と雨だとすれば、今は三月の梨の花に降る細雨のようだった。

古琴の音色は本来冷たい傾向があるが、今、挽沅の手の中では、まるで柔らかくなり、骨髄まで染み込むような優しさを帯びていた。

目を閉じると、まるで清風が吹き抜け、花びらが風に乗って動き、頬に落ちるのを感じるようだった。鼻先には微かな香りが漂い、陽光は穏やかで、暖かく体を照らし、時は静かに流れていた。