かつて夏王朝の動乱の時代、長公主である夏挽沅は、幼い弟妹たちを守り抜きながら、文武両面で才覚を示して諸侯をまとめ上げ、遂には実弟を皇帝の座へと押し上げた。歴史書にも刻まれる伝説の存在だった彼女が、ふと目を開けた先は、千年後の異なる世界。
そこにいたのは、同じく「プリンセス」と呼ばれる一人の女性。
ただし、それは芸能界で富と権力を笠に着てやりたい放題の、傲慢でわがままな「お姫様」への皮肉を込めた悪口だった。
「――面白い。いずれ、心からの敬意を込めて『プリンセス』と呼ばせてあげる」
余裕の笑みを浮かべる夏挽沅に、世間の声は冷ややかだ。
「本気で自分をお姫様だと?後ろ盾の旦那様にも、もうすぐ捨てられるくせに」
事実、夫である君時陵からも「慰謝料1億だ。今すぐ消えろ」と言い放たれる始末。
――二年後。
「夏挽沅が才能ゼロのお飾り女優?笑わせるな!」
かつて彼女を叩いた者たちは、手のひらを返したようにひれ伏していた。
若くして二度の主演女優賞に輝き、
世界が注目するファッション界の寵児となり、
琴碁書絵すべてを極め、
国内最高学府で二学科教授を務め、
フェンシングや射撃で五輪金メダルを総なめにし、
その個人資産は世界にまたがる巨大企業を形成……
「こんな完璧超人がポンコツなら、私たちは虫以下だ…!土下座するのでお許しを…!」
一方、あの冷徹だったはずの夫は――
「離婚?そんなデマを流す奴は天の果てまで追い詰めて潰す。なあ、姫よ、もう一人子どもを作りたいんだが……」
これは、偽りの評価をすべて覆し、本当の輝きで世界をひれ伏させ、冷徹だったはずの旦那様からの溺愛を勝ち取る、痛快極まりない極甘シンデレラストーリー!