第371章 神秘な少年

夏挽沅は振り向くと、金髪碧眼の若い学生が少し恥ずかしそうに彼女を見ていた。

「何か用?」夏挽沅は尋ねた。

「こんにちは、僕はニックです。この学校の学生なんですが、羅曼大師のコンサートを見に行きませんか?」

「?」挽沅は少し困惑した様子だった。

挽沅の冷たい視線の下、若い学生は思わず顔を赤らめた。

「僕はボランティアなんです。スタッフ専用の入り口からあなたを中に案内できますよ」

「おや、華人の誇りがコンサートに招待状もなく、ボランティアに頼らないと入れないのか?」

挽沅がまだ答える間もなく、リチャードの声が横から聞こえてきた。

挽沅が振り向くと、その冷たい瞳に触れたリチャードは一瞬ひるんだが、考え直して、大通りだし、彼女も人前で暴力を振るうことはないだろうと思い直し、再び勇気を出した。

「初めて見たよ、自ら殴られに来る奴が」挽沅は赤い唇を軽く開き、190センチの身長を持つリチャードはすぐに挽沅から2メートル離れた場所に飛びのいた。

..........

元々挽沅を守ろうと前に出ようとしていた学生も、一気に後ずさりした。

「人前でだぞ、俺を殴ったら即警察を呼ぶからな!」

そう言いながらも、挽沅の手加減のなさを知っているリチャードの目には恐怖の色が見えた。

「招待状すらないのに、ここに立って聞いてるしかないな。結局お前みたいな人間は、羅曼大師のような上流階級の音楽家に近づくことなんて永遠にできないんだよ」

リチャードはそう言いながら懐から招待状を取り出した。これは彼が加羅王子の縁故で手に入れたものだった。得意げに挽沅を一瞥してから、大きく揺れながら学院内に入っていった。

ただし彼の歩き方は非常に奇妙で、まるで激しい痛みを我慢しているかのようだった。

挽沅は口をとがらせた。招待状があれば、あの老人の弾くピアノをもう一度聴きたいと思っていた。確かに素晴らしい演奏だったからだ。しかし招待状がないなら、無理に求めることもない。

角を曲がると、花壇に座って泣いている小さな男の子がいた。足音を聞いて、男の子は顔を上げた。澄んだ青い瞳は、まるで空全体を映し出しているようだった。

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羅曼大師は人々に囲まれながら車から降り、皆に手を振った。視界の端で見覚えのある姿を捉えた。