君氏グループの事業は工業や先端産業を中心としており、君おじいさまの時代には、映像業界にはほとんど関わっていなかった。
君時陵が引き継いだ時、彼は科学技術産業に目を向け、近年エンターテイメント業界の利益が大きいにもかかわらず、そちらには目を向けることはなかった。
君氏グループの一挙手一投足が将来の業界動向を示すことから、多くの人々は「もしかして国が近々エンターテイメント業界を支援する新政策を打ち出すのではないか」と推測し始めた。
大勢の人々が映像業界の株を買い始め、いくつかの企業も君氏グループの足跡をたどり、小さなエンターテイメント会社を買収し、君氏グループと共に利益を分け合おうとした。
陳勻と唐茵はスターメイキングエンターテイメントが君氏グループに買収されたことを知り、顔を見合わせた。「もしかして君社長が夏挽沅のために直接スターメイキングエンターテイメントを買収したのではないか」
会社が買収された以上、所属するアーティストとその契約は当然、君氏グループの名義に移ることになった。
スターメイキングエンターテイメントが倒産寸前だと見て逃げ出そうとしていた所属アーティストたちは、会社が君氏グループに買収されたと知ると、急いで荷物をまとめて夜のうちに会社に戻ってきた。冗談ではない、これは強力な後ろ盾だ。どんなことがあっても逃げるわけにはいかない。
すでに様々な方法で逃げ出していたアーティストたちは、今になって後悔しても間に合わなかった。
新しい経営陣に変わり、新しい契約も結ばれ、唐茵と陳勻はようやく安心した。もう夏挽沅があの奇妙な契約に足を引っ張られる心配はなくなった。
邸宅内で、夏挽沅もこのニュースを知った。
「ついでだよ。グループはずっと映像業界に進出する考えがあったんだ。ただ機会が見つからなかっただけで、ちょうどスターメイキングエンターテイメントに問題が起きたから、君の問題も解決できて一石二鳥だった」
君時陵が真剣に話すとき、その言葉の真実性を疑うことはできなかった。
「私は特別扱いされたくないの」どこに行っても人から指をさされる感じは良いものではない。
「安心して、会社の日常運営には絶対に干渉しないよ」陵はいつも約束を守る人だった。彼が干渉しないと言えば、干渉しないだろう。夏挽沅はようやく安心した。
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