夏挽沅に何もなかったので、お爺さまも安心し、君時陵を外に連れ出して二、三言葉を交わした後、安心して屋敷を後にした。
「ママ、痛くない?」小寶ちゃんは車椅子の横で哀れっぽく立ち、心配そうに夏挽沅の足を見つめていた。
しばらく見た後、小寶ちゃんは大きな目を見開いて君時陵の前に走り寄り、小さな拳で時陵を一発殴った。「パパ、ママを守れなかったの。もう好きじゃない」
時陵は小寶ちゃんを叱るどころか、彼を持ち上げて膝の上に抱き寄せた。「うん、私が悪かった」
「パパのせいじゃないわ。私が不注意だったから、こうなっちゃったの」挽沅は小寶ちゃんの頭を撫でながら言った。「パパが私を助け出してくれたのよ」
「そうなんだ」小寶ちゃんは頷いて、振り返って時陵の首に抱きついた。「パパ、ごめんなさい。誤解してた」
「奥様、夏ぼっちゃんも昨日お電話をくださって、ご様子を伺っておりました。お帰りになったらお電話を返すとお伝えしておきました」夏挽沅が無事に帰ってきたのを見て、王おじさんはやっと胸の石が下りた気がした。
「わかったわ。すぐに電話するわ」夏瑜が軍区に行ってからもう少し経つし、確かに電話をした方がいいわね。
——
軍区内で、瑜は30キロの砂袋を背負いながらトラックを走っていた。初夏の日差しが合成ゴムのトラックを照らし、層々と高温を蒸発させていた。
瑜はトラックを一周また一周と走り続け、汗が髪の間から滲み出ていたが、少しも不平を言わず、歯を食いしばって耐え続けていた。
「王隊長、20周走り終わりました。食事に戻ってもいいですか?」ようやく20周を走り終えた瑜は、重い足を引きずりながら、片足を組んでのんびりとお茶を飲んでいる王匯の方へ歩いていった。
「だめだ、あと20周追加だ。さっきショートカットしただろう。見逃したと思うなよ。20周と言ったら、最大周回で走るんだ」瑜の顔から雨のように流れる汗を見て、王匯の目に得意げな色が浮かんだ。
この瑜が入隊したばかりの頃、同じ隊の隊員と揉め事を起こしたのだ。彼が怒らせた相手はある軍区幹部の親戚だった。瑜の隊長として、王匯は当然指示を受けていた。「殺さない程度に、徹底的に鍛えろ」