第13章 弟

昼食時、夏挽沅は李おかあさんに料理を作らせず、ネットの手順に従って自分で出前を注文した。30分もしないうちに、挽沅が注文したさまざまなスイーツとメインディッシュが届いた。

「すごいね」挽沅は食べながら感心していた。傍らでは李おかあさんが呆れた様子で挽沅の出前を見ていた。

金メダル級のシェフ資格を持つ自分の料理がおいしくないというのか？夏お嬢さんは最近、庶民的なスタイルに走り始めたのだろうか？

そうして李おかあさんは一方的に失業の不安に陥っていった。

昼食後、挽沅が昼寝をしようと思った矢先、携帯の着信音が鳴った。

登録されていない番号を見て、挽沅は少し躊躇したが、それでも電話に出た。ネットでは迷惑電話が多いと聞いていたからだ。

「もしもし！夏おねえさん、夏瑜が大変なことになったんです。誰に電話していいかわからなくて、おねえさんに電話しました」

電話の向こうはとても騒がしく、挽沅は相手にもう一度繰り返してもらってようやく理解した。

そこで彼女は思い出した。この体の元の持ち主には確かに父親違いの弟がいたのだ。

夏挽沅の父親は女性が大好きで、挽沅は正妻の子だった。

一方、弟の夏瑜は愛人が密かに産み、後に夏家に引き取られた子供だったため、挽沅には好かれておらず、二人の関係は非常に悪かった。

しかし挽沅がまだ幼い頃、実の母親は病死し、夏お父さんはすぐに新しい若妻を家に迎え入れた。

挽沅は芸能界に入ってからは、めったに家に帰らず、その義理の弟とはほとんど何年も連絡を取っていなかった。

父親違いの兄弟は、昔の夏朝の言い方では側室の子と言われるが、今の挽沅とその弟の間には恨みはなく、彼女の弟である以上、何が起きたのか見に行くつもりだった。

電話で若者が言った場所に着くと、豪華な個室は散らかり放題で、割れた酒瓶が床一面に散乱していた。

入り口に挽沅が現れるのを見て、先ほど電話をかけてきた若者が額を押さえながら挽沅の前まで駆け寄ってきた。

「夏おねえさん、早く瑜にいさんを説得してください。怪我をしているのに、どうしても病院に行こうとしないんです」

挽沅は割れた酒瓶を避けながら中に進んでいくと、数人の若者に囲まれていた奥の少年の姿が見えてきた。

目を引くピンク色の髪、額の前髪は少し伸びていて、うつむくと繊細な眉や目元を隠していた。入り口の物音に顔を上げると、彼の整った顔立ちのおかげで、ピンク色の髪もなぜか似合っていた。来訪者を見ると、彼の目に怒りの色が閃いた。

「何しに来たんだ？笑いものを見に来たのか？」夏瑜の整った顔には嘲笑が満ちていた。興奮しすぎて怪我をした腕を動かしてしまい、小さく痛みに息を呑んだ。

挽沅は瑜を見ると、まだ17、18歳くらいだが、若者特有の活気は微塵もなく、腰まで大きく開いたシャツからは透けるような白い肌が見えていた。

「喧嘩したの？」挽沅は赤い唇を開き、瑜の血を流している腕を見た。かなり深刻そうだ。彼女は目に笑みを浮かべて言った。「しかも負けたの？情けない」

「お前に関係あるか！」瑜は喧嘩に負けたことで既に恥ずかしい思いをしていたのに、挽沅にからかわれて面子が保てなくなった。

「行くわよ、病院で診てもらいましょう」挽沅は口論するつもりはなく、彼の様子を見るとかなり深刻で、早く包帯を巻かないと失血過多で厄介なことになると思った。

「お前に俺を管理する資格なんかない。行かないぞ」瑜は反抗的に挽沅を一瞥した。

「小李さん、小王さん、彼を連れ出して病院に連れて行って」挽沅の言葉が終わるや否や、もともと林靖から挽沅の引っ越しを手伝うために派遣されていた人たちが入ってきて、瑜の抵抗を無視して彼を担ぎ出した。