第14章 お見舞い
病院の中で、腕にギプスをはめられ、頭に包帯を巻かれた夏瑜はベッドに横たわっていた。検査の結果、軽度の脳震盪の可能性があるため、医師は二日間の経過観察入院を勧めていた。
明らかに夏挽沅が彼を強引に病院に連れてきた方法に腹を立てており、整った顔には怒りが満ちていた。
挽沅は医師から瑜の状態について尋ね終えると、病室へと向かった。
入口から見ると、大人ぶった遊び人の装いを脱ぎ捨て、シンプルな病衣を着た瑜の姿には、どこか子供らしい幼さが感じられた。
入口から聞こえる足音に、瑜はいらだたしげに顔を上げた。来たのが挽沅だと分かると、眉をさらに深くしかめた。
「うるさいんだよ。こんなことする？しかも手伝い呼んできて」そう言いながら、瑜の顔には少し恥ずかしさも浮かんでいた。強制的に病院に連れて来られるなんて、あまりにも恥ずかしい。かっこいいイメージが台無しだ。
「自分で来るって言ったら来たの？なんで手伝いを呼んじゃいけないの？」
挽沅は瑜に近づきながら、からかうような笑みを浮かべた。
「あなたみたいに強がって、結局誰かに殴られて病院送りになるのがいいの？」
「人数が多かっただけだよ。負けただけじゃん」瑜は不自然に俯き、長いまつげが目の中の不満を隠した。「あいつらが余計なこと言うからだ」
「相手が多いなら、あなたも人を呼べばいいじゃない？強がっても勝てないわよ」
その言葉を聞いて、瑜は急に顔を上げ、挽沅の笑みを含んだ目と向き合った。
挽沅に馬鹿にされたり嘲笑されたりすると思っていたのに、まさか挽沅が彼にも人を呼べと言うとは思わなかった。
「関係ないだろ。なに、家が破産して、撮る映画もなくなって、暇すぎて俺の面倒を見に来たのか」
心の中の居心地の悪さを隠すために、瑜は以前のように反射的に挽沅を皮肉った。
しかし言い終わるや否や、挽沅の笑みを含んだ潤んだ瞳と目が合い、瑜は少し後悔した。
「暇じゃないわ。映画もあるわよ。あなたはゆっくり休んで、しばらく病院から出ないでね」
挽沅は瑜の気まずさを見抜いていた。瑜はまだ成長しきれていない子供に過ぎず、挽沅も彼の言葉を気にしなかった。
言い終えると、挽沅は階下へ向かい、瑜の入院費を支払いに行った。
挽沅の遠ざかる背中を見ながら、瑜は口を開きかけたが、結局何も言えなかった。
夕食の時間になると、隣の病室からにぎやかな声が聞こえてきた。
瑜は騒がしさで目を覚まし、麻酔の効果が切れ、腕の傷がひりひりと痛んでいた。
入口を一瞥した後、瑜は視線を戻した。
「ふん、食事を持ってきてもらって偉いね。世界中に知らせたいみたいな騒ぎ方」
隣のテーブルには看護師が持ってきた弁当があった。瑜は弁当を手に取り、箸で中の米をかき混ぜた。「弁当だってうまいさ、ふん」
口では気にしないと言いながらも、瑜の心には酸っぱさが広がり、目尻が徐々に赤くなっていった。最後には意地を張って、怪我をしていない左手で強く目をこすった。
数口噛んだ後、瑜はついに弁当を脇に放り投げた。「まずすぎる」
入口からとんとんと走る音が聞こえ、瑜は隣の患者の家族が来たのだろうと思った。
心が痛み、布団を頭からかぶって自分を閉じ込めた。聞かなければ静かだ。
瑜は布団の中で目を固く閉じ、すでに溢れそうな涙を押し戻そうとした。
しかし布団の外から突然小さな力が加わり、彼の布団をめくろうとしていた。
瑜は看護師だと思い、無視しようとしたが、その力は非常に粘り強く、布団を引っ張り続けていた。
瑜はうんざりして突然布団をめくると、小さな頭がベッドに乗せられ、黒いぶどうのような大きな目が潤んで彼を見つめていた。
「おじちゃん、起きてたの！」
小寶ちゃんはかわいらしい声で呼びかけ、好奇心いっぱいに今まで会ったことのないこのおじさんを観察していた。
瑜は心臓が跳ねるのを感じ、ソファに淡いピンクのニットワンピースを着た挽沅が静かに座っていることに気づいた。
夏家の人々として、彼は挽沅と君時陵が結婚したことを知っている数少ない人物の一人だった。
しかし長い間挽沅と連絡を取っておらず、以前は時陵も君胤を自由に外出させることはなかったため、瑜はこれが君胤と初めて会う機会だった。
目の前のふわふわした小さな子供を見て、瑜も少し慌てて、軽く返事をするしかなかった。
「おじちゃん、目が赤いよ。泣いてたの？」
子供には遠回しな言い方はなく、思ったことをそのまま口にする。
瑜は慌てて挽沅を一瞥し、小寶ちゃんの質問に困惑した。
「いや、泣いてないよ。病院の食事が辛すぎて、辛さで目が赤くなっただけだ」
挽沅はテーブルの上のトマトと卵の炒め物ご飯を見て、それを信じた。
瑜は挽沅が弁当を見る視線に気づき、顔がゆっくりと赤くなっていった。
「何しに来たの？」
瑜は首を伸ばして挽沅を見上げ、この姿勢で自分をより自信があるように見せようとした。
しかし彼は自分の細かい髪が布団の中で乱れていることや、泣いた後の赤い目尻を考慮していなかった。強がった態度も、他人の目には可哀想で可愛らしく映るだけだった。
「おじちゃん、病気になったって聞いたから、ママが僕を連れてきたんだよ。おいしいものも持ってきたよ」
新しい家は市内にあり、小寶ちゃんの幼稚園からも車で20分ほどだったので、挽沅は自分で小寶ちゃんを迎えに行って家に帰った。
今日の李おかあさんは特に豪華な食事を作っていた。挽沅はまだ李おかあさんが一方的に失業の不安に陥っていることを知らず、ただ今日の李おかあさんが海で泳ぐもの、空を飛ぶもの、地を走るものをすべて一品ずつ作ったことだけを知っていた。
以前食べたことのない多くの料理を食べ、挽沅はとても満足していた。
今日の小寶ちゃんの下校時間は比較的早く、彼らも早めに食事を済ませた。病院にいる瑜のことを思い出し、挽沅は李おかあさんに瑜のためにいくらか食事を詰めてもらい、誰かに届けてもらおうとした。
しかし小寶ちゃんはもう一人のおじさんがいると聞くと、どうしても会いたいとぐずり、挽沅は彼の願いを聞き入れ、自分で食事を持って来ることにした。
挽沅は食事の入った容器をベッドの前に持ってきて、ベッドのテーブルを広げ、まだ湯気の立つ料理を一皿ずつテーブルに並べた。
白くてぷっくりとしたエビ、香り豊かな骨スープ、鮮やかな緑の野菜、湯気がゆらゆらと立ち上り、瑜の目を潤ませた。
「食べて。明日何か食べたいものがあれば教えて、李おかあさんに作ってもらって持ってくるわ」
ご飯を瑜の前に置くと、挽沅は自分でソファに座り、病室のテレビをつけた。
心の中でちょっと感動していた瑜だったが、テレビに「坊ちゃんの甘い小可愛」が映っているのを見て、完全に無言になった。
「おじちゃん、早く食べて」傍らの小寶ちゃんは小さな大人のように瑜に食事を急かした。「冷めたらおいしくなくなっちゃうよ」
「うん」気まずいテレビから視線を外し、単調な弁当と比べて、目の前の色、香り、味すべてが揃った食事に食欲が湧いてきた。