夏挽沅は会社に着くと、直接沈騫のオフィスで皆と会議を開き、沈騫について来たスタッフたちの待遇や給与の問題について話し合った後、その場を後にした。
「まあ、夢みたいだわ」
「ちょっと私をつねって、これって本当なの?」
夏挽沅がオフィスを出て行くのを見送りながら、皆はまだ現実感がないようだった。
沈騫がこの信じられないほど美しい女性が会社の取締役だと言った時点で彼らは驚いていたが、挽沅が提示した待遇の良さに更に舌を巻いた。彼らの能力は確かに優れているものの、まだ若く経験も浅い。業界では良いポジションを得られるとはいえ、挽沅が提示したような高待遇は他に類を見ないものだった。
最初は挽沅が世間知らずのお嬢様で、単に気まぐれで会社を買って遊びたいだけで、給与や待遇について詳しくないから、こんな高額な条件を出したのだろうと思っていた。
しかし先ほどの会議で、挽沅が多くの問題について独自の見解を持ち、思考が鋭く的確であることがわかった。彼らの議論は非常に専門的なものだったが、挽沅はまったく素人には見えず、むしろ多くの提案において独創的なアイデアを持っていた。
「どこからやって来た天才なんだろう」李勇は思わず感嘆した。「夏取締役は20歳くらいにしか見えないのに、この30歳の私が恥ずかしくなるほど凄いなんて」
沈騫は友人の感想を聞きながら、ふと思い立ってネットで夏挽沅を検索した時に出てきた記事やニュースを思い出し、複雑な気持ちになった。
会社を出た挽沅は、運転手に少し買い物をさせてから、夏瑜の学校へ向かった。
車の中から学校の環境を眺めていた挽沅だったが、ふとグラウンドでバスケットボールをしている瑜を見つけ、運転手に車を止めるよう指示した。
バスケットコートに入ると、挽沅は人目につきにくい隅の方を見つけ、そこから瑜のプレーを見守った。
バスケットコートでは、青春溢れる少年たちが汗を流しながら思い切りプレーしていた。
「夏瑜、ボール!」蘇枚がフェイントを入れ、瑜にボールを渡した。瑜はボールを受け取ると、相手のブロックをかわし、美しい放物線を描く3ポイントシュートをバスケットに決めた。
「わぁ〜!素晴らしい!」
コートには通常なら男子が多いはずだが、今日は無数の女の子たちが詰めかけ、キラキラした目で瑜たちの方を見ていた。