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今回、夏挽沅は君時陵の視線から逃げなかった。
そのため、彼女は時陵の目に宿る熱い温度と、目尻や眉から溢れ出る優しさを見た。
普段は見過ごしていたすべてのことが、この瞬間、心の中で突然繋がった。
「いいかな?」時陵はもう一度尋ねた。普段は決断力のある彼の声に、今は気づきにくいほどのわずかな震えが混じっていた。
彼は挽沅の目をじっと見つめ、そこに少しでも拒絶の色が見えることを恐れていた。
「わからない」しばらく沈黙した後、挽沅はようやく口を開いた。
挽沅は優柔不断な人ではないが、今この瞬間、自分の心がどんな感情なのか説明できなかった。
彼女は認めた。知らず知らずのうちに時陵に依存するようになっていたようだ。しかし、この見慣れない感情に対して、どう向き合えばいいのかわからなかった。
時陵の目に一瞬の暗さが過ぎったが、少なくとも彼女の口から拒絶の言葉は聞かれなかったことに、彼はとても安堵した。
「じゃあ、時間をあげよう。あと半月で祖父の誕生日だ。その時には、君が本当の君夫人として彼にお祝いを述べに行くことを願っている」
「うん」挽沅は頷いた。
「もう一度抱きしめてもいい?」今回は挽沅の返事を待たずに、時陵は先ほどの体勢のまま、彼女を腕の中に引き寄せた。
挽沅は一瞬硬直したものの、拒否はしなかった。時陵の目に笑みが浮かんだ。
「暑くないの?」挽沅は少し呆れた。抱きついたりして、彼女は時陵から伝わってくる灼熱の温度を感じていた。
時陵は軽く笑い、手を挽沅の肩に置き、少し力を入れて彼女を自分の胸にもっと近づけた。
「感じる?」時陵の声が挽沅の耳元をかすめ、理由もなく彼女の心を乱した。
「何を?」挽沅は思わず尋ねた。
「速く鼓動している」時陵は挽沅をさらに自分の胸に引き寄せた。
挽沅はそれを感じた。薄い夏服を通して、時陵の心臓の鼓動が力強く速く打っていた。
その心臓の鼓動の存在感が強すぎて、挽沅は少し身をよじって時陵の腕から抜け出そうとした。
「君が恋しかった」時陵は頭を少し下げ、挽沅の耳元で静かに言った。
挽沅の動きが突然止まり、彼女の顔が肉眼で見えるほどの速さで真っ赤に染まった。
時陵はもちろん挽沅の赤く染まった耳先も見逃さなかった。今回はようやく彼女を解放した。