カメラマンは夏挽沅の後ろ一歩離れたところについていた。夏挽沅がドアの前に立ちはだかっていたため、部屋の一角しか撮影できなかった。視聴者たちがもう少し近づいて撮影し、お金持ちの寝室がどんな感じなのか見たいと思った矢先、画面が真っ暗になった。
【?????何が起きたの】
【うわぁ、もしかして部屋に誰か隠れてる?】
【なんでドア閉めちゃったの?部屋に何か見せられないものでもあるの??????】
【開けてよ、これライブ配信でしょ?何やってんの?真っ暗な画面見るために来たんじゃないんだけど?】
その時、部屋の中では、
「仕事に行かなかったの?」夏挽沅はドアを閉め、驚いて君時陵に尋ねた。
「僕は寝床に慣れないから、昨夜はあまり眠れなかったんだ」君時陵は手に持っていた雑誌をゆったりと置いた。「少し遅く起きてしまって、君がもう撮影を始めていたから、出ていかなかったんだ」
「外にはまだカメラマンが待ってるわ。先にバルコニーで待っていてくれない?」夏挽沅は今日のトップニュースが彼女と君時陵のことで爆発するのは避けたかった。
「いいよ」君時陵は立ち上がりながら言い、そばの棚から小さな軟膏を取り、深い眼差しで夏挽沅の口角を見つめた。「塗っておいて」
夏挽沅が軟膏を受け取った後、やっと君時陵が彼女の口の小さな傷に塗るよう言ったのだと気づき、その場で耳たぶが熱くなった。
君時陵は夏挽沅の耳元の朝焼けのような色に気づき、目に笑みが浮かんだ。
コメント欄ではさまざまな憶測が飛び交っている中、ついにドアが開いた。
「すみません、片付けていない服があって、急いでいたので、いったんドアを閉めて整理してから寝室をお見せすることにしました」
夏挽沅の目には絶妙な申し訳なさが浮かび、頬には微かな朝焼けのような色が残っていた。
カメラマンが彼女について部屋に入ると、部屋の中は何も問題なく、みんなはようやく夏挽沅の説明を信じた。
必要なものを取り、夏挽沅はすぐにカメラクルーを連れて寝室を出た。君時陵がバルコニーから部屋に戻ると、棚の上に小さなパンの袋が二つ置かれているのが見えた。
君時陵の目に温かみが浮かび、パンを取って朝食とした。
夏挽沅はスナックを取り、「喜羊羊と灰狼」のアニメを開始した。コメント欄が疑問符だらけになる中、黙々と視聴し始めた。