第217章 君少が生配信に登場

君時陵は普段、礼儀正しく節度を守る人物で、夏挽沅と過ごす時には常に自分の威厳を抑え、次第に人々に温和で自制心のある人だという印象を与えていた。

しかし、先ほど君時陵が放った威圧感に、夏挽沅は彼が強い人物、強い男性であることを実感した。もし何の境界線もなければ、それは適切ではないだろう。

「わかった」君時陵は非常に穏やかに頷いた。

「じゃあ早く行って」夏挽沅が時陵に寝るよう促そうとした瞬間、不意に彼の手が彼女の顎を優しく持ち上げた。時陵の手の熱さに、彼女は驚いて目を見開いた。

「唇の端が切れてる」時陵は近づいて夏挽沅の唇の傷を見ると、眉をひそめた。

「大丈夫だから、早く寝て」夏挽沅は耳元の温度がまた上昇し始めるのを感じた。

「薬を塗ってあげる」時陵の目には不賛成の色と、自分の行動が激しすぎたことへの後悔が浮かんでいた。

「本当に大丈夫だから、早く寝て」夏挽沅は今夜は本当に奇妙だと感じた。時陵と一緒にいると、空気中の温度まで上昇しているようだった。

「いいこだ、言うことを聞きなさい」時陵の低い声が耳元で響き、夏挽沅の耳を完全に赤く染め上げた。

「おやすみ、もう寝て」時陵がまだ夏挽沅に薬を取りに行こうとしていたところ、突然彼女に押されてドアの外に出された。

パタンと目の前で閉まったドアを見て、時陵は黙って鼻先を撫でた後、目に深い愛情と笑みを浮かべた。

恥ずかしがるのもいい、彼に対して少し気まぐれを見せるのもいい。

隣の寝室に横たわりながら、時陵は今夜が非常に甘い夜だと感じる一方で、この2ヶ月で最も寂しい夜でもあると感じていた。

一晩中寝返りを打ち、夜明け近くになってようやく時陵はゆっくりと眠りについた。

寝室のシーツや布団には、夏挽沅の体に似た淡い香りがあり、朦朧とした中で少し安らぎをもたらしていた。

小寶ちゃんは学校に行く必要があり、そしてまもなく『私はスターだ』の撮影クルーがやって来る予定だった。

夏挽沅は小寶ちゃんと一緒に起きて身支度を整え、準備ができて朝食を食べに階下に降りても、時陵の姿は見えなかった。

時陵のいつもの習慣から考えて、夏挽沅は彼がすでに早くに起きて仕事に行ったのだろうと思い、李おかあさんに二人分の食事だけ用意するよう頼んだ。