第123章 雲間夢

君時陵の車に乗り込み、高層ビルを通り過ぎながら、徐々に郊外へと向かった。

車内でも君時陵は仕事を怠らず、夏挽沅は彼がページをめくりながら次々と書類に目を通す様子を見て、心の中で感嘆した。

「前に言ってたことは違うと思うわ」夏挽沅が突然声を上げた。

「ん?」書類から意識を引き離し、時陵は挽沅を見つめ、目に疑問の色を浮かべた。

「もしあなたが君家の家長でなかったら、君家集團はここまで発展していなかったと思う」

挽沅の言葉を聞いて、時陵は口角を上げた。「褒めてくれているのかい?」

「わからない?」挽沅は問い返した。

時陵の笑顔はさらに明るくなった。「君に褒められて光栄だよ。到着まであと少しかかるから、少し話でもしようか」

「いいわよ。毎日こんな風に書類ばかり見てるの?」

「まあね、時には…」時陵は根気強く会社のことについて挽沅に説明し始めた。

挽沅は時陵との会話が大好きだった。彼は見識が広く、非常に忍耐強い人物で、彼との会話は「君の一席の話を聞くは、十年の書を読むに勝る」という古い諺そのものだった。

挽沅は現代社会のさまざまな制度、文化、思想に高い関心を持っており、まるで好奇心旺盛な子供のようだった。時陵はそんな挽沅の質問に一つ一つ丁寧に答えていった。

いつの間にか時間が過ぎ去り、

「旦那様、奥様、到着しました」車が止まり、運転手が外からドアを開けた。

時陵が先に車から降り、運転手は気を利かせて離れ、時陵は挽沅の降車を手伝った。

「ここは山頂?」

挽沅は少し驚いた。気づかないうちに山に登っていたとは思わなかった。

「ああ、山の上は少し寒いから、風邪をひかないようにね」時陵はそう言いながら自分の上着を挽沅に掛け、彼女を前へと導いた。

少し歩くと、目の前に明るく照らされた大きな建物群が現れた。山の中にあって、まるで仙境のようだった。

「君社長、お食事の準備ができております」

制服を着た従業員が敬意を表して入り口で待っていた。君時陵の来訪のために、雲間夢全体が貸し切られていた。

従業員が先導し、正面玄関から入ると、道沿いには花が飾られ、ピンク色のバラが夢のような長い廊下を形作っていた。

挽沅は穏やかな性格だったが、美しいものが好きだった。結局、美を愛さない女性など本来いないのだから。