第251章 隔たりが生じた

夏挽沅は今回、階段の手すりをしっかりと掴んで上がった。

君時陵は後ろから、夏挽沅が再び落ちないようにと慎重に歩む姿を見て、唇の端を上げた。

挽沅が去った後、時陵はひとりで館内を半時間ほど巡ってから出た。

挽沅はシャワーを浴びて服を着替え、ソファに座ってテレビをつけた。

画面が点いたとたん、イケメンの主人公が女性主人公の顔を両手で包み、熱心にキスをしているシーンが映っていた。

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挽沅はチャンネルを変えた。うん、今度は男女の主人公が結婚式を挙げている。さらに別のチャンネルに変えると、男女の主人公がソファで転がり合っていた。

挽沅の顔の温度が急に上昇し、慌ててテレビを消した。最近のドラマはどうなっているんだろう、恋愛ばかりで他に放送できるものはないのだろうか。

脳裏に時陵が先ほど言った言葉が浮かび、挽沅は携帯を取り出して「女の子が目を閉じる」と検索した。すると関連する答えが一列に表示された。

「女の子が目を閉じるのは、キスを待っている合図です。」

「女の子が目を閉じるのは、あなたへの暗示です。」

「女の子が目を閉じるとき、それはあなたを誘惑したいという意味です。」

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挽沅は無力感を覚えながら額に手を当てた。現代人にもこんな習慣があるのだろうか?

目を閉じただけで誘惑したいと言うのだろうか?

それなら時陵は先ほど、彼女が誘惑しようとしていると本当に思って、あんなふうにキスしたのだろうか?

悩んでいる間に、時陵はすでに彼女の方へ歩み寄り、とても自然に近くのドライヤーを手に取り、挽沅の後ろに立って髪を乾かし始めた。

挽沅は気づいていなかったが、彼女はすでにシャワーの後に髪を乾かさない習慣がついていた。どうせ時陵が乾かしてくれるのだから。

リビングには、ドライヤーの作動音だけが響き、挽沅と時陵は二人とも口を開かなかった。

髪が乾いたところで、時陵は仕事をするために二階に上がろうとしたが、挽沅が突然彼を呼び止めた。

「君時陵。」

「どうした?」時陵は足を止め、挽沅の向かいに座った。

「さっきのは、そういう意味じゃなかったの。」

「どういう意味?」時陵の目に笑みが浮かんだ。