第250章(追加更新、正午に公開)君少が腹黒くなった

この時、君時陵は夏挽沅のすぐ近くにいた。夏挽沅は少し顔を上げると、彼の目に宿る熱を見ることができた。夏挽沅はすぐにあの時のアパートでの出来事を思い出した。君時陵の目には同じ熱が宿っていた。

夏挽沅は何か違和感を覚え、後ろに下がろうとしたが、君時陵に肩を押さえられた。

「いつも俺を誘うなよ」君時陵は夏挽沅の顔を拭く手を再び動かし始めた。額から耳元まで、極めてゆっくりと動かし、夏挽沅の顔の水滴を丁寧に拭き取っていった。

「何の誘いよ?」夏挽沅は目を丸くした。彼女はいつ彼を誘ったというのだろう。

「女性が男性の前で目を閉じるのは、誘いじゃないのか?」君時陵の夏挽沅を見る目は非常に深く、夏挽沅は彼の手からタオル越しに伝わる熱を感じることができた。

「あなた」夏挽沅は驚いて弁解しようとしたが、目は君時陵の手にあるタオルで覆われてしまった。

「成功したよ」

君時陵の低い声が夏挽沅の耳元で響いた。

夏挽沅が何が成功したのかと尋ねようとした瞬間、あの冷たい松の香りが彼女に押し寄せてきた。

夏挽沅は避けることもできたはずだが、この時の彼女は心が少し乱れていた。時陵の冷たい松の香りに包まれながら、彼女は多くのことを考えたが、彼を押しのけることだけは考えなかった。

時陵もそれに気づき、唇の端を上げ、目の中の暖かさがさらに増した。そっと目の前の朱色の唇に覆いかぶさった。

前回のアパートでの強引さとは違い、今回の時陵は過度に優しかった。

一つ一つの小さな動きが極限の忍耐と包容力を表していた。

最も侵略的な雰囲気と最も優しい動きが、夏挽沅を一瞬呆然とさせ、不意に時陵に彼女のプライベートな領域を開かれてしまった。

長い間狙っていた領域にようやく再び入ることができ、時陵は非常に熟練した様子で、挽沅の心に波紋を起こすことができるあらゆる場所を席巻した。

時陵が極限の忍耐で編み出した網の中で、挽沅はこの優しい夢の中に引き込まれていった。

目はタオルで覆われ、周りのものは見えず、ただ周囲が時陵の気配で満ちていることと、彼の熱烈な奪取だけを感じることができた。