夏挽沅が入ると、しばらく会っていなかった薄曉が居間で小寶ちゃんと楽しそうに遊んでいるのが見えた。
「お義姉さん」夏挽沅が入ってくるのを見て、薄曉は立ち上がって挨拶した。夏挽沅は笑顔で頷いた。
小寶ちゃんはこのイケメンのおじさんに久しぶりに会えて、大好きなウルトラマンも放っておいて、曉にまとわりついていた。
夏挽沅は横にいる君時陵をちらりと見た。普通の様子で、怒っている様子はなさそうだった。
次の瞬間、時陵の声が聞こえた。「すごいな、酒を飲んで車を運転するとは。警察に通報して逮捕してもらおうか」
「飲んでないわよ、全部吐き出したし、ただ少し酒の匂いがするだけ」
挽沅は華国の法律についてちゃんと調べていた。彼女が酒気帯び運転なんてするわけがない。
時陵は冷ややかな目で挽沅を見たが、結局それ以上は何も言わず、お茶を一杯注いでくれた。
曉が今日来たのは、もちろん単に食事にあずかったり、小寶ちゃんのおもちゃになったりするためだけではなかった。
夕食後、時陵は曉を書斎に連れて行った。
曉が時陵の書斎に入るのは数年ぶりだった。かつてはシンプルでダークな雰囲気だった書斎が、今では様々な書画で埋め尽くされていた。
机の上にはピンク系のカップが置かれ、隣の椅子には何体ものウサギのぬいぐるみが置かれていた。
曉は思わず感慨深げに言った。「昔は僕があなたの書斎に入るのに幾重もの許可が必要で、外から少しでも埃を持ち込まないように気を使ったものだけど、今じゃお義姉さんがここで食事をしても何も言わないんでしょう?はぁ、男ってやつは」
昨日、挽沅が書斎で書道の練習をしていた時、自ら食事を書斎に運んできた時陵は、珍しく曉の言葉に反論しなかった。
「で、今日は何の用だ?」
曉は世間が思っているような遊び人ではなく、むしろ非常に忙しい。林靖が時陵の表向きの特別補佐なら、曉は時陵の裏方の助手のようなもので、毎日大量の仕事を処理していた。用事がなければ時陵のところに来ることはない。
「あの日話したように、Kさんの人間がすでに帝都の上層部に浸透している。私が得た情報によると、鄭家と切っても切れない関係があるらしい。もうすぐ選挙の年だ」
「今は草を動かして蛇を驚かさないようにしよう」