第19章 人を迎えに行く
翌日の朝早く、夏挽沅は運転手を派遣して夏瑜を迎えに行かせた。
自分のピンク色の髪が小さなまるまるちゃんの脆弱な世界観に衝撃を与えることを心配して、夏瑜は来る前に特に美容院に行って髪を元の色に染め直した。
黒くて柔らかい髪を頭に乗せた夏瑜は、むしろ少年らしい幼さが増していた。
瑜はあまり荷物を持ってこなかった。挽沅は基本的な生活必需品をすべて用意しており、瑜を連れて家の中を一周した。
「一階の左側の部屋は李おかあさんがすでに片付けておいたから、そこに住んでね。」
「ああ。」瑜は頭を伸ばしてこの家の内装を眺め、さらにこの優れた立地条件を考えると、思わず舌を打った。
「おい、これをあげる。」瑜は挽沅にカードを渡した。
「何これ？」
挽沅は疑問に眉を上げた。
「知ってるだろ、あの男は月に私にそんなにお金をくれないし、あまり残ってないんだ。これからは毎月のをあなたにあげるよ。」
瑜は無頓着に口を尖らせた。「生活費だと思ってよ。毎食黄焖鸡を食べる羽目になりたくないからね。」
挽沅は面白そうに瑜を見た。
彼はきっとネット上のコメントを見て、自分にお金がないと心配して銀行カードを渡そうとしているのだろう。
目の前のカードを押し戻す。
「私はまだそこまで貧乏じゃないわ。」
「ふん、いらないならいいよ、強情者。」拒否されて、瑜は少し面子が立たなかったが、挽沅がプライドの高さからこのお金を受け取らないのだと思った。
結局のところ、今は夏家が破産して、彼女に浪費させるお金がなくなった。挽沅は確かに大物と結婚したが、彼の君時陵に対する理解では、挽沅が大通りで死んでも、時陵は一瞥もくれないだろう。
「さあ、まず食事にしましょう。明日は南方の撮影現場に行かなければならないから、あなたはここにいてね。」
食事の後、小寶ちゃんは昼寝に連れて行かれ、挽沅はバルコニーに寄りかかって窓辺の胡蝶蘭を眺めていた。
「なぜ私を連れ戻したの？以前はずっと私を空気のように扱っていたじゃないか？」
今は誰もいないので、瑜はついにこの数日間ずっと心に秘めていた質問を口にした。
「私はあなたの姉よ、」挽沅は振り返って瑜を見て微笑んだ。「それに、あなたは優しい子だから。」
彼女は聖母ではなく、誰かを見かけたらすぐに救いの手を差し伸べるわけではない。瑜は悪い子ではなく、ただ関心を持ってくれる人が不足しているだけだ。だから彼女は彼を助けようと思ったのだ。
瑜は信じられないという顔で挽沅を見つめた。彼が優しい？不良少年が優しい？それを聞いたら帝都の人々は笑い死にするだろう。
しかし挽沅のこの言葉を聞いて、否定できないことに、瑜の心の中には喜びのキノコが生え始めた。「その言葉は私が三歳の時なら信じたかもしれないけど、あなたは一体何の目的があるの？」
「私の目的は小寶ちゃんにおもちゃを見つけることよ、それでいい？」挽沅は笑いながら言った。「自分の荷物を片付けに行きなさい。他人がやってくれると期待しないで。」
挽沅は言いながら手を振って瑜に立ち去るよう促した。彼女は子供と争わない。
「誰が他人にやってもらいたいって言ったんだ。」
瑜はぶつぶつ言いながら階下に降りた。はっきりとした答えは得られなかったが、瑜は不思議と心が少し嬉しかった。
私はこんなに大きいのに、彼はあんな小さなまるまるちゃんなのに、誰が誰のおもちゃになるというのか、ふん。
「坊ちゃま、夏家の若坊ちゃま夏瑜、夏お嬢さんの異母弟ですが、夏お嬢さんにアパートに連れ戻されました。ずっとそちらに住むようだと聞いています。」
君時陵は買収会議を終えてオフィスに戻ったところで、林靖が迎えに来た。
「ふむ。」
時陵は夏家についてあまり印象がなく、淡々と返事をした。あのマンションはもともと離婚の際に彼女に渡すつもりだったので、誰が住むかは彼女の自由だ。
「君胤の状況をしっかり見ておけ。」
「はい。」
林靖が振り返って去ろうとしたとき、背後の時陵が突然彼を呼び止めた。
「待て、」時陵は署名していたペンを置いた。「その夏瑜は何歳だ？」
「すでに調べました。夏瑜はちょうど十八歳です。」
林靖の言葉を聞いて、時陵は剣のような眉を寄せたが、最終的には何も言わなかった。
「下がれ。」
林靖は、先ほど数十億の買収案に目もくれなかった時陵が、今や眉をひそめ、金縁の眼鏡の奥の目に不明瞭な光を宿しているのを見た。
半秒考えた後、林靖は断固として口を開いた。「明日、夏お嬢さんが撮影現場に行くと聞いています。若坊ちゃまの世話をする時間がないかもしれません。坊ちゃま、若坊ちゃまを屋敷に連れて帰って面倒を見られてはいかがでしょうか？」
林靖の言葉を聞いて、時陵はしばらく黙っていたが、ようやく口を開いた。
「車を用意しろ。」
「かしこまりました、坊ちゃま。」
無表情の林靖は振り返り、そして「やはりそうか」という表情を見せた。
夕食を食べ終わったところで、挽沅は小寶ちゃんとソファに座って「喜羊羊」を見ていた。瑜はその横で足を組んで彼らを嫌そうに見ながら、うんざりしていた。
あの三歳のまるまるちゃんがこんな幼稚なアニメを好きなのはまだ理解できるが、あの凤眼を細めて笑い、夢中になって見入っている女性は一体何に取り憑かれているのだろう。
「おじちゃん、大きな虎が村長さんを捕まえたのかな？」
「明らかに違うよ。今、足跡が映ったでしょ。明らかに狼の足跡だよ。」
一瞬前までまるまるちゃんを嫌っていた瑜が、次の瞬間には全面的に解説を始めた。
チリンと鈴の音がしたが、アニメの解説に夢中になっていた小寶ちゃんと瑜は気づかなかった。
挽沅が立ち上がってドアを開けると、突然墨のような目と向かい合った。長身で立派な君時陵が、一身の冷たさを纏って立っていた。
「君時陵？」
清らかな泉のしずくのような声、これは挽沅が初めて彼の名前をこのように呼んだ瞬間だった。時陵は不思議と心地よく感じた。
目の前の挽沅を一瞥した後、時陵は室内を見渡した。花々の影の向こうから、少年の明るい声と小寶ちゃんの甘い笑い声が聞こえてきた。
「明日、君は撮影現場に行くそうだな。小寶ちゃんを迎えに来た。」
時陵は淡々と言った。
「ああ。」挽沅はようやく思い出した。時陵のことを忘れていたのだ。彼女が撮影現場に行くなら、子供を実の父親のところに連れて行くのは当然のことだ。
そう言いながら挽沅は横に身を寄せて場所を空け、時陵に入るよう促した。
ソファの上では、明るい少年と小寶ちゃんが寄り添っていた。小寶ちゃんはこの面白いおじさんにくすくす笑わされていたが、時陵が前に来るまで彼に気づかなかった。
「パパ。」小寶ちゃんは笑いを収め、少し恐る恐る時陵を見た。
瑜はこれが初めて時陵に会う機会だった。目の前の男の威厳に圧倒され、一瞬静かになったが、時陵の後ろにいる挽沅を見ると、再び背筋を伸ばした。
小寶ちゃんが自分を恐れていることに気づき、彼の到着によって部屋中の笑い声が静まり返ったことに、時陵は目を伏せた。
「うん、明日お母さんは撮影現場に行くから、私が屋敷に連れて帰りに来たんだ。」
「うん、パパ、でもママが帰ってきたら、またママと一緒に住めるの？」
「それは、」時陵は後ろの方向を少し見た。「彼女が迎えに来てくれるかどうか次第だな。」
小寶ちゃんは期待を込めて挽沅を見つめ、丸い大きな目には満ちあふれる愛情が詰まっていた。
「ママは仕事が終わったらすぐに迎えに行くわ。」挽沅は笑いながら小寶ちゃんにウィンクした。
「やったー！」小寶ちゃんはこれで喜んだが、すぐに屋敷に戻ったらおじさんと遊べなくなることに気づき、顔を曇らせた。「じゃあこの間はおじちゃんと遊べないね。」
時陵はようやく警戒して彼を見ている瑜に目を向けた。
山のように深い視線が、ただ一瞥しただけで、瑜の心を冷やした。
時陵がまさに口を開こうとしたとき、彼は人を夏家に送り返すつもりだった。
予想外にも、挽沅が突然前に出た。「かねてより若き才能の中で、君坊ちゃまが最も優れた才能を持つと聞いております。もし瑜が君坊ちゃまについて少しでも学ぶ機会があれば、彼にとっては十年の大学教育よりも価値があるでしょう。」
挽沅の一言一句の褒め言葉を聞いて、幼い頃から数え切れないほどの人々に仰ぎ見られて育った時陵は、心が波立った。
挽沅は時陵を見つめ、瞳を輝かせた。「さらに、小寶ちゃんは彼に付き添ってほしいと思っています。君坊ちゃまは瑜を一時的に滞在させてくださいませんか？」
小寶ちゃんは挽沅の言葉を聞いて目を輝かせ、時陵の足に抱きついて期待を込めて見上げた。
大きな方は瞳を輝かせ、小さな方は天真爛漫。時陵は拳を握りしめた。
「では一緒に帰ろう。」
挽沅は時陵に感謝の笑みを向け、梨のようなえくぼを半分見せた。時陵の呼吸が止まった。
瑜はとても腕白だ。挽沅は瑜を抑えられる人はあまりいないと思った。あれこれ考えた結果、帝都全体で時陵の側ほど適した場所はないと思った。
さらに、彼女が今言ったことは本心だった。時陵は彼女の二度の人生で出会った最も優秀な人物だ。瑜を時陵についてさせて性格を磨くのは、本当に損ではない。
一方で、議論の主役の意見はこうして忘れ去られた。
時陵の閻魔様のような顔を見て、瑜の心の中では一万頭のアルパカが狂ったように走り回った。
ああああああ、私はまだ何年か生きたいのに！！！！！