「誰?」
夏挽沅は首をさすりながら、ソファに座った。
君時陵は夏挽沅にメモを渡し、彼女はそれを受け取って見た。
メモには、枝に止まる小鳥が描かれており、その羽毛や細部まで見事に描写され、まるで生きているかのようだった。
挽沅はこの小鳥を一目見て、誰が送ってきたのか分かった。そばにあった茶箱を手に取り、香りを嗅いだ。
風を返し雪を舞わせるという香り、良い茶葉だ。
「知り合い?」時陵は挽沅の動きを見ながら、心が沈んだが、表面上は何でもないように尋ねた。
「ビジネスパートナーよ。この茶葉、悪くないわ。飲んでみる?」
挽沅はそう言いながら、茶箱を時陵の前に差し出した。
時陵は眉を下げて挽沅の手にある茶葉をちらりと見て、表情を冷たくした。「この茶は美味しくない」
そう言うと、時陵は袖をひるがえして立ち去り、まっすぐ階段を上がっていった。
挽沅は少し驚いて時陵の背中を見つめた。なんだか怒っているような気がする。
しかし間もなく、時陵は再び階下に降りてきた。手には青花磁器の壺を持っていた。
時陵はテーブルの上の「風を返し雪を舞わせる」を脇に寄せ、手にしていた青花磁器の壺を挽沅の前に置いた。
この磁器は色鮮やかで質感が繊細、一目で名工の手によるものと分かる高価なものだった。こんな壺に入れられるものは、さぞ貴重なものに違いない。
「これは何?」挽沅は首を傾げて尋ねた。
時陵が蓋を開けると、濃厚な茶葉の香りが漂ってきた。挽沅の目が輝いた。良い茶葉だ。
時陵はそばにあった急須を取り、直接挽沅のために茶を淹れた。他の手順は一切必要なく、ただお湯を注ぐだけで、茶葉に秘められた豊かな香りが引き出された。
挽沅は茶碗を受け取った。茶葉が湯の中で渦を巻き、茶湯は鮮やかで明るく、澄んで透明だった。これは最高級の烏龍茶だけが持つ品質だった。
挽沅は一口飲んで、口いっぱいに甘みが広がるのを感じた。濃厚で強い香りが周囲に漂い、よく味わうと、この茶には微かに蘭の花の香りさえ感じられた。
「この茶、本当に素晴らしいわ」挽沅は目を細めて微笑んだ。
時陵はそれまで茶葉に注意を向けていたが、ようやく挽沅の服装や身なりに気づいた。
普段、家では素顔でいる挽沅には、清楚で素朴な美しさがあった。