夏挽沅が世界音楽大会に参加していることを知り、O州に留学している多くの学生や記者たちが駆けつけた。
冷たい表情で出てきた夏挽沅を見て、みんなはカシャカシャと写真を撮り、すぐに国内に送信した。
【この表情を見ると、成績はかなり悪かったんじゃないか。】
【当然じゃない?古琴の曲を数曲弾けるだけなのに、ファンたちが大したものみたいに持ち上げてた。今回は痛い目に遭ったね?音楽大会の門すら入れなかったんだから。】
【夏挽沅が準決勝まで進んだことだけでも、彼女に実力があることを証明してるじゃない?】
【どんな手段で進んだか誰が知ってるの?ふん、あなたの国の音楽はこんなにレベルが低いのに、準決勝に進めるなんて、みんな不思議に思わないの?】
【前のバカは「あなたの国」って言ってるけど、なんで私たち華国の文字を使ってるの?売国奴は長く跪いてたから立ち上がれないの?】
基本的に、夏挽沅のファンと彼女を嫌う人たちが激しく争っていても、誰も挽沅が準決勝を通過するとは思っていなかった。
国内では大騒ぎになっていたが、それは挽沅の気持ちにはまったく影響しなかった。
準決勝の結果は翌日にならないと出ないため、挽沅がホテルに戻ろうとしていたところ、君時陵からメッセージを受け取った。
「劇場の裏口で待っている」
挽沅は回り道をして劇場の裏口に向かうと、確かに時陵の車が路肩に停まっていた。
「私を迎えに来たの?」
「いや、観客として来たんだ」時陵は少し笑って言った。「とても素晴らしい演奏だった」
時陵は忙しかったにもかかわらず、なんとか時間を作って挽沅の演奏を最後まで見ていた。
挽沅は時陵に褒められて少し照れた。「今日は忙しくないの?」
「午後からまた忙しくなる。食事に連れて行くよ」挽沅を腕の中に引き寄せながら、時陵は運転手に指示した。「行こう」
車は時陵と挽沅を乗せて、華やかなセントラル大通りをゆっくりと通り抜けた。まるで挽沅の好奇心に配慮するかのように、壮大な景観を通過するたびに、車のスピードは特に遅くなった。
挽沅は車の窓越しに、華国とは全く異なる洗練された外の景色を、目に新鮮な光を宿して見つめていた。