ランキングの1位と2位は、誰もが知る著名な音楽家で、桜花国で近年名を馳せている若手音楽家は、多くの人々の目には、今回の準決勝で上位3位を争う有力候補と映っていた。
ところが、思いもよらず華国から突如現れた夏挽沅が、今年最大のダークホースとなり、一気に準決勝3位に躍り出たのだ。過去の大会では、チャンピオンは常に準決勝上位3名から誕生していたことを考えると、これは驚くべきことだった。
そこで多くの人々が、この夏挽沅とは何者なのかを調べ始めた。
しかし、音楽界の新人リストを隅々まで調べても、そのような人物は見つからなかった。まるで彼女は突然どこからともなく現れたかのようだった。
最終的に、『長歌行』を観たことのある一部の外国人が、この名前に見覚えがあると感じ、これは華国の女優・夏挽沅ではないかと推測した。
これにより多くの疑問が生じた。世界の音楽シーンで一度も名を馳せたことがなく、本業が女優である人物が、どうして準決勝3位を獲得できたのか?
今回の大会に参加した寒國の音楽家の一人は、準決勝で11位という結果に終わり、決勝進出まであと一歩のところで敗退したため、SNS上で音楽大会の公式アカウントに対して質問を投げかけた。
この夏挽沅には何の実績もなく、有名な作品もなく、さらに世界の主流音楽界ではまったく受け入れられていない古琴を使用していることを考えると、
一方、落選した11位の寒國の音楽家は、世界的にもある程度の知名度があった。
多くのネットユーザーがこの音楽家の味方につき、世界音楽大会は不透明な操作があり、裏工作があるのではないかと次々と疑問を呈した。
最終的に、海外のウェブサイトでこの問題はますます大きくなり、ニュースは国内にも伝わった。
国内のマーケティングアカウントやニュースメディアは、注目を集めるために、「華国女優・夏挽沅が世界音楽大会準決勝3位に、海外で八百長疑惑の集中砲火」というセンセーショナルな見出しを使った。
海外のネットユーザーだけでなく、これらのメディア自体も記事を書く際に、外国のネットユーザーの意見に同調し、挽沅はランキングの順位を金で買ったのだろうと考えていた。さもなければ、華国の音楽と、認知度が極めて低い古琴という楽器では、そのような好成績を収めることは不可能だと思われていた。