368章 姫の酔い

寒國のミュージシャンの動画も見つけられて視聴されていた。演奏されていたのは難易度がかなり高いピアノ曲で、その実力は人々に敬服されるものだった。

しかし、上位10位にランクインした中で、夏挽沅を除いて、誰一人として名を挙げれば誰もが知る有名人ばかりだった。

そして夏挽沅の曲については、音楽に詳しくないネットユーザーでさえ、審査員の採点に問題がないことが聞き取れた。

文化が異なり、言語が通じなくても、音楽は音を通じて感情を伝えるものだ。

皆は簡単に挽沅の音楽に込められた感情に感動し、彼女の音楽に含まれるオーリーという街への愛情を感じ取った。彼らは直接オーリー音樂學院を訪れたわけではないが、挽沅の音楽は彼らにその陽光をもたらしたのだ。

理性的なネットユーザーが徐々に現れ始め、冷静なコメントもますます増えていった。

ニュースが国内に伝わると、激しく議論していたネットユーザーたちは一斉に呆然とした。

【えーっと?つまり夏挽沅が世界音楽コンクールの決勝に進出したのは本当なの?】

【わぁ、私たちの沅沅は本当にすごいわ!!】

【今ビデオを見終わったところだけど、夏挽沅は名実ともに素晴らしいとしか言えない。】

【黒子さんたちはどうして黙ったの??今はどうして夏パパが国の恥だとか言わないの?夏パパは海外で国の名誉を高めているのに、あなたは何してるの?キーボードの後ろに隠れて偉そうに批判してるだけじゃない。】

ニュースメディアはいつも話題性のあるところに集まるもので、この事態の展開を見るや否や、すぐに見出しを変えた。「夏挽沅、予選で3位、今大会の世界音楽コンクールで優勝候補のダークホースに。」

【……今のメディアは狂ってるの?いつも大げさな表現をするのはやめられないの?】

【私は夏挽沅のファンだけど、彼女が3位を取れたことだけでも本当に尊敬してる。メディアがこんな風に持ち上げるのはあまり良くないと思う。】

メディアのこの過剰な賞賛は、ようやく収まりかけていた議論を再び引き起こす結果となった。

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国内では盛り上がっていたが、挽沅の方は自分が決勝に進出したことさえ知らなかった。

なぜなら挽沅は、酔っていたからだ。

挽沅が酔うと特に素直になり、暴れたり走り回ったり叫んだりしない。

椅子にきちんと座って、話しかけられると頭を傾げて微笑む。