第42章 マスター

「パパ、ママはどこ?」

学校から帰ってきた小寶ちゃんは、ピョンピョン跳ねながら家に入ってきて、きょろきょろと目を回して見渡したが、夏挽沅の姿は見当たらなかった。

「ここでおとなしく宿題をしなさい。お母さんは足を捻挫して休んでいるから、邪魔しないように」

「えっ?ママの足はどうして捻挫したの?パパ、ママを守れなかったの?」挽沅が怪我をしたと聞いて、小寶ちゃんは心配で仕方なく、少し責めるような目で君時陵を見た。

......

「宿題をしなさい」時陵の顔が冷たくなった。

「はーい」小寶ちゃんは不本意そうに時陵の隣に座った。

沈修は屋敷を出て、家に帰って中二病の妹がぶつぶつ言っているのを聞いて、ふと思い出した。以前、妹のスマホで似たような写真を見たことがあったのだ。

「沈星、こっちに来なさい」

「何よ、お兄ちゃん。私、今推しの応援投票してるんだけど」思春期真っ只中の沈星は、今人気絶頂の俳優・言賜に夢中で、家中に彼のポスターを貼りまくっていた。

「この前、お前の推しとスキャンダルになったのは誰だっけ?」

「私の旦那様に便乗して売名しようとする女なんて山ほどいるわよ。どの子のこと?」

沈星はガムを噛みながら、まるで「私の推しがどれだけ人気か知らないの?」と言わんばかりの軽蔑した表情を浮かべた。

「沈星、お前は女の子なんだぞ!もう一度言うけど、知らない男を『旦那様』だの何だのと呼ぶのをやめないと、お小遣いなしにするからな」思春期のアイドル追っかけの妹に、修は本当に頭を悩ませていた。

「ちぇっ」星は内心では納得していなかったが、お小遣いを止められるのは怖かったので、素早く修に向かって顔をしかめた。

「この前、お前がスマホを投げつけたときの話だよ」修はこめかみをさすった。

「ああ、夏挽沅のこと?」夏挽沅のことを思い出すと、星はあの時、挽沅が大勢の前で言賜の腕に手を回したせいで、「言賜と夏挽沅」というワードがSNSのトレンドに3日間も掲載されたことを思い出した。

そして夏挽沅のような問題だらけの人物は、芸能界のどのスターのファンも自分の推しと関わってほしくないタイプだった。

言賜には熱狂的な彼女面ファンが多く、これが彼らの怒りに火をつけ、挽沅の最後の一般人気も完全に失わせる致命的な一撃となった。

「写真を見せてくれ」