朝の微風が、湖の蓮の香りを運びながら、二階の寝室に吹き込み、清々しい涼しさをもたらした。
陽光が床まで届く窓から斜めに足元に差し込み、わずかな熱さを感じた夏挽沅は、ゆっくりと目を開けると、見慣れた顔が目に入った。
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既視感のある光景に、挽沅は顔を下げた。案の定、自分は君時陵の腰をぎゅっと抱きしめていて、二人の間には何の隔たりもなく、朝の時陵の男性としての自然な反応まではっきりと感じ取れるほどだった。
挽沅の顔は一瞬で真っ赤になり、ゆっくりと手を引き、少し後ろに下がった。
この動きで、時陵は目を覚ました。
時陵はとても良く眠れなかったようで、目には少し充血が見られた。
「起きたの?」朝起きたばかりの時陵の声は、低く磁性を帯びていて、まるで電流が挽沅の耳元ではじけるようで、聞いているだけで心がぞくぞくした。
「あなた...私...」挽沅は珍しくもごもごと言葉を詰まらせ、何かを思い出したように下を見ると、自分はパジャマを着ていた。昨夜はドレスを着ていたはずなのに!
「服は李おかあさんが着替えさせてくれたんだ」挽沅の動揺を察して、時陵が言った。
「じゃあ私たちは?」
「忘れたの?」時陵の目に笑みが走ったが、表情は非常に真剣だった。「昨日、君は酔っぱらって、僕が抱えて帰ってきたんだ。でも君は僕の手を離さなかった。僕が君胤と一緒に寝ようとしたら、手を離した途端、君は泣きそうな顔で不満そうにしていたよ」
??
挽沅の目には明らかな疑問が浮かんだ。自分は本当にそんなことをしたのだろうか?
しかし時陵の表情はとても真剣で、それに挽沅の心の中では、時陵はいつも言葉通りの人だった。彼には自分を騙す理由もない。
挽沅の頬の赤みはさらに濃くなった。「ごめんなさい、酔っていて分からなくて」
「大丈夫だよ。じゃあ、今起きてもいい?」挽沅は顔を下げていたため、この時の時陵の目に流れる笑みに気づかなかった。
「起きればいいじゃない、なんで私に聞くの」
「まだ抱き枕が必要かと思ってね」時陵の予想通り、挽沅の顔色はますます赤くなった。
「早く行ってよ」周りは時陵の冷たい松の香りで満ちていて、挽沅の心を乱していた。顔を上げなくても、時陵の顔には今、からかうような笑みが浮かんでいるのが分かり、挽沅は恥ずかしくなった。