第330章 姫が危険に

飛行機のドアが閉まる直前、背の高い人影が夏挽沅の隣に座った。

「夏お嬢さん、お久しぶりです」馴染みのある桃花眼が笑みを浮かべ、宣升は夏挽沅に微笑みかけた。

「ええ、どちらへ?」夏挽沅は宣升に頷きながら尋ねた。

「月の山へ行くんですよ。私が投資したプロジェクトですから、こんな大事が起きたら見に行かないわけにはいきません。夏お嬢さんも月の山へ?」

「ええ、私もそこへ」

「なんて偶然」宣升の桃花眼が再び笑みで満ちた。

夏挽沅は頷くだけで、それ以上は何も言わなかった。

しかし1時間前、盛世グループのオフィスでは、

「若様、夏お嬢さんが月の入り江プロジェクトの視察に行かれるとわかりました」

パソコンでカタカタと打っていた宣升は突然動きを止めた。「いつ?」

「1時間後です」

宣升はすぐに立ち上がり、秘書が慌てて後を追った。「若様、どちらへ?」

「空港だ」

秘書の運転違反で一度に12点減点された後、宣升はようやく時間ぎりぎりに空港に到着し、最後の瞬間に飛行機に乗り込んだ。

横を向いて夏挽沅の美しい横顔を見ると、宣升は秘書の12点減点は価値があったと思った。帰ったら給料を上げてやろう。

フライト時間はやや長く、ちょうど昼食時間と重なり、客室乗務員が乗客に昼食を配り始めた。

自宅の星付きシェフの料理でさえ食べられない宣升にとって、機内食の容器に入った食べ物など論外だった。断ろうとした瞬間、隣の夏挽沅がすでに手を伸ばして一つ取っていた。宣升は一瞬躊躇した後、客室乗務員から一つ受け取った。

夏挽沅は食べ物に対して下限も上限も極端な人だった。

食べるものがない時は粗末な蒸しパンでも我慢できるが、あれば満漢全席でも喜んで食べる。

飛行機の中は「食べるものがない時」に該当し、夏挽沅は手際よく包装を開け、どろどろに見えるカレーポテトを食べ始めた。味は悪くなかった。

夏挽沅がスプーンで一口ずつ食べる様子を、宣升はずっと見つめていた。

「どうしました?」宣升の視線に気づいた夏挽沅が顔を向けて尋ねた。

「美味しいですか?」宣升の整った眉が寄っていた。あの黒っぽいものは見た目が少し変だった。