君時陵は驚いて振り向くと、夏挽沅が疲れた様子であくびをしているのが見えた。
挽沅は遠慮するタイプではなかった。どうせ同じベッドで寝たことがあるし、時陵は紳士だし、彼女は少し暗闇が怖かったので、思い切って時陵に残って寝てもらうことにした。
「すごく眠いわ、おやすみ」また一つあくびをして、スマホの光に照らされて、時陵は挽沅の目に浮かぶ朦朧とした涙さえ見ることができた。
「うん、おやすみ」
時陵が側にいることで、挽沅は非常に安心し、また夜中に走り回ったせいで少し疲れていたため、枕に頭をつけるとすぐに眠りについた。
時陵は靴を脱いでベッドに上がり、再び振り向くと、挽沅はすでに深い眠りに落ちていて、その整った顔立ちは灯りの下でより一層柔らかく美しく見えた。
時陵はスマホのライトを消し、部屋は再び暗闇に包まれた。
挽沅はとても深く眠っていたが、時陵は不眠に悩まされていた。鼻先には挽沅の身体から漂う淡い香りが漂い、さらに今夜は小寶ちゃんがいないことも影響していた。
普段は子供が間にいることで、心は静かで波立つことはなかった。
今日はほんの手を伸ばせば挽沅に触れることができる距離で、時陵の心はやや熱くなっていた。
振り向いて、稲妻の光で挽沅の安らかな寝顔を見た時、時陵は苦笑した。
一方では挽沅の信頼に喜びを感じ、もう一方では挽沅が彼の自制心を過大評価していることに無力感を覚えた。
いつも抱きしめていたまるまるちゃんがいなくなり、挽沅は腕の中が空っぽに感じていた。
意識はまだ眠りの中にあったが、体は無意識のうちに、すでに抱き慣れた温かい存在を探していた。
時陵がようやく心の中の動揺を抑え、眠気が徐々に襲ってきたとき、鼻先の淡い香りが突然濃厚になり、腕も抱きしめられた。
時陵は驚いて振り向くと、挽沅が彼の肩元にいるのが見えた。もともと二人の間にはもう一人寝られるほどの空間があったが、今はそれが完全になくなっていた。
春の終わりの夜は少し冷気を含んでいた。挽沅は自分の布団から出てきて、今は寝間着一枚だけを着て、時陵の側に寄り添い、時陵の腕を抱く手はやや冷たかった。
時陵は心の中で深くため息をつき、それから布団をめくった。
温かい源を感じ取ると、時陵が手を動かす必要もなく、挽沅は自ら時陵の布団の中に転がり込んだ。