第361章 世界音楽大会入選

秦曼月の設定は、最初は上海灘の富豪の愛娘で、甘やかされて育った、上海灘の名士サークルで最も名高い紅薔薇だった。

彼女の初登場は、あるパーティーの場面だった。

この時の秦曼月は、まだ高慢で気品のあるお嬢様で、穆風のメイク技術は非常に自然で、夏挽沅本来の気品を残しつつも、顔の輪郭を少し丸くして、愛らしさを加えていた。

赤いイブニングドレスが肌を白玉のように引き立て、歩くたびに秦家のお嬢様としての誇りと気品が漂っていた。

周りは現代的な装いの人々ばかりなのに、夏挽沅がそこに立つだけで、まるで民国時代の絵から抜け出してきた美人のような印象を与えた。

監修者として傍で見ていた楊九は、その場で絶賛したいほどだった。これこそ彼が小説を書いていた時に思い描いていた秦曼月の姿だった。それどころか、挽沅は彼の想像以上に完璧だった。

「よし、撮影開始するよ、準備して」李恆も挽沅の扮装に非常に満足し、すぐに撮影の準備を整えるよう指示した。

優雅な音楽が流れ、エキストラたちが配置につき、秦曼月は音楽に合わせて大広間に歩み寄った。カメラは前後に動き、挽沅のあらゆる角度を捉えていった。

『長歌行』での訓練のおかげで、挽沅は今ではカメラに対する感覚が非常に鋭くなっていた。李恆は挽沅に無限のインスピレーションを見出し、一日中彼女を撮り続けた。日が暮れかけても、挽沅の体調を考慮しなければ、李恆は夜間も撮影を続けたいほどだった。

言賜は自分のシーンの撮影をすでに終えていたが、帰らずにいた。

彼も若くして名を馳せ、演技に天賦の才を持つ人物だったが、挽沅の演技を見終わった後、彼女の将来の成功は自分に劣らないものになるだろうと感じた。

空はすでに暗くなり、挽沅が撮影基地の門を出ると、君時陵の車が門の前で待っていた。挽沅が車に乗り込むと、遠くの角で一日中待機していたパパラッチが、ようやく話題になる場面を見つけ、シャッター音を連続して鳴らした。

「足は大丈夫?」時陵はすでに温めておいた水を挽沅に手渡した。

「大した問題はないわ」一日中撮影していたが、遠景を撮る必要がある時以外はハイヒールではなくフラットシューズを履いていたので、それほど疲れは感じなかった。