夏挽沅は顔を赤らめ、君時陵の冷たく凛とした横顔を見つめながら、心の中で少し慌てていた。
前の席の運転手:どうしよう、大社長の一件を見てしまった、口封じされるんじゃないか。ああ、二人とも早く降りてくれないかな。もう夫婦なのに、抱き合うだけでこんなにイチャイチャするなんて。ああ、下の通りの羊の内臓スープ屋さんがまだ開いているかな。お腹空いたな、仕事終わったらすぐに羊の内臓麺を一杯食べに行こう。
「帰ろう、今日はお腹が空いただろう」
挽沅の困惑に気づいた時陵は、ようやく手元の書類を置き、先ほどの出来事を水に流すように切り出した。
「うん」
二人の帰りは少し遅くなっていた。小寶ちゃんは時陵に早寝早起きを厳しく言いつけられていたため、とっくに夕食を済ませ、うとうとしながら挽沅を少し待っていたが、今はもう眠りについていた。
李おかあさんたちが食事を運んでくると、挽沅の食欲は、テーブルいっぱいの料理の香りに完全に刺激された。
テーブルの上には挽沅が好きな料理がたくさんあったが、唯一一皿の大きなエビには手をつけていなかった。
夏朝は海から遠く、挽沅は前世で海鮮をあまり試したことがなく、こういった殻付きの食べ物に対して自然と抵抗感があった。
時陵は顔を上げて一瞥した。彼は前回、武夷山の海辺での食事にもエビがあったことを覚えていた。その時、挽沅はかなり美味しそうに食べていたように見えた。
しばらくすると、時陵は手を伸ばして、隅にあったエビの皿を自分の前に引き寄せた。
天下を指揮し、ビジネス界の浮沈を握るその手が、今エビの殻をむく様子は、依然として非常に優雅で見事だった。
すぐに、白くてぷっくりとしたエビの身が時陵の手の中に現れた。
一秒後、それは挽沅の茶碗の中に置かれていた。
挽沅はごく自然にエビの身を箸で取り、一口で食べた。新鮮で甘みがあり、殻をむいたエビの身は確かに美味しかった。
挽沅の遠慮のない動作を見て、時陵は怒るどころか、むしろ目に浅い笑みを浮かべていた。
これほど長い間育ててきて、ようやく挽沅に彼の前で距離感や礼儀を取り払わせることができた。
時陵の手は止まることなく、挽沅の茶碗のエビの身も途切れることはなかった。