第320章 万死も辞さず

「誰が殺したの？」

原主の記憶では、彼女の母親は病死したはずだったが、衛子沐の言葉を聞いた途端、夏挽沅は何か裏があることを察した。きっと原主の母親の死には隠された真相があるのだろう？

「挽沅妹、言えることはただ一つ、あなたのお母さんは幼い頃から健康で、心臓病の素因などなかったということ。でも彼女の検死結果には、心臓発作と記されていた」

「それで？あなたがこれを教えてくれる理由は？」

「老夫人があなたに会いたがっている。衛雨はもう連絡したはずだ」衛子沐は夏挽沅に箸を渡した。

彼がそう言うと、夏挽沅は彼の意図を理解した。もし子沐が原主の母親のことを持ち出さなければ、挽沅が衛家を訪ねる気はそれほどなかっただろう。しかし彼がこう言った以上、挽沅は原主の母親のために真相を明らかにするためにも、一度訪ねるべきだろう。

「うん、行くわ」

「挽沅妹、安心して。僕が一緒に行くから」子沐は挽沅に微笑みかけ、包容力と励ましを込めて言った。「まずは食事をしよう」

夏挽沅はようやくテーブルの料理に目を向けた。

すべて原主の好みの味付けだった。

挽沅の箸が一瞬止まったが、すぐに平静を装って食事を始めた。他人から見れば、何の違和感もないように振る舞っていた。

「暑くなってきたから、これは私が自分で作った扇子だ。撮影が大変だと聞いたから、これをあげる。撮影現場で少しでも涼しくなれるように」

食事の後、子沐は脇に置いてあった箱から扇子を取り出した。暗い紫色の光を放つ扇子は、全体が冷たく感じられた。子沐は本当に気を遣っていた。

「もし間違っていなければ、これは私たちの二度目の出会いよね。このプレゼント、ちょっと高価すぎるんじゃない？」夏挽沅は少し困惑した。

他の人とは違い、子沐からは不快な殷勤さを感じなかった。彼のすべての行動は非常に誠実に見え、目に宿る思いやりと包容力は演技とは思えなかった。

それがますます彼女を困惑させた。挽沅はこれまで衛家と交流したことはなく、ましてや子沐とは言うまでもない。なぜ彼は彼女にこれほど親切なのだろう？

「高価なものじゃない。本当に君を妹のように思っているんだ。この気持ちだけ受け取ってくれ」子沐は扇子を箱に戻し、挽沅に差し出した。挽沅は手を伸ばして受け取った。

「ありがとう」