「ああ、いいよ、どうぞ」
夏挽沅はケーキを君時陵に渡し直した。小寶ちゃんの世話をする習慣から、夏挽沅は親切にも包装を開け、スプーンを君時陵の前に差し出した。
「...........」
君時陵は夏挽沅を深く見つめ、手に持っていた書類を置き、スプーンを受け取った。
一瞬、車内は静寂に包まれ、濃厚な茶の香りだけが車内に漂っていた。
家に帰ったのは、いつもより遅かった。
君時陵と夏挽沅が家に入ると、黄色いピカチュウが玄関に座っているのが見えた。
遠くから見るとおもちゃのようだったが、近づいてみると、それは顔をしかめ、口を尖らせて玄関の真ん中に座っている小寶ちゃんだった。大きな目で二人を恨めしそうに見ていた。
「ここで何してるの?」夏挽沅は小寶ちゃんの不満げな様子に笑みを浮かべた。
「パパとママ、お腹すいた。どこ行ってたの、今帰ってきたの」
「お腹ペコペコ、パパとママどこ行ってたの」小寶ちゃんは苦い顔をして、今にも泣き出しそうな様子だった。
「先に食べればよかったのに」夏挽沅は前に出て小寶ちゃんを立たせ、手に持っていたケーキを渡した。「ほら、買ってきたよ」
「わぁ、ママ最高!!」かわいい子豚のケーキを見て、小寶ちゃんの顔から不満の色が消え、喜びに満ちた表情になった。
「坊ちゃん、奥様、やっとお帰りになられましたね。先ほど坊ちゃまがお腹を空かせていましたが、先に食べるようにと言っても拒否され、どうしてもお二人と一緒に食べたいとおっしゃっていました」
王おじさんは君時陵たちが帰宅するのを見て、すぐに食事の準備をするよう人に指示した。「お食事の準備ができております」
夏挽沅は先に抹茶ムースを一つ丸ごと食べていたので、あまり空腹ではなく、ご飯を半分ほど食べるとお腹いっぱいになった。
一日の疲れで、夏挽沅はお風呂に入りたいと思った。「ゆっくり食べてね、今夜は私と一緒に寝ようか」
現代に来てから、小寶ちゃんは夏挽沅に非常に懐いていた。この数日間、ずっと夏挽沅と一緒に寝たいとねだっていた。今では夏挽沅の足もだいぶ良くなったので、小寶ちゃんを主寝室に連れて一緒に寝ようと思った。
「うん!!ママ待ってて!!」
口いっぱいに食べ物を詰め込んだ小寶ちゃんは嬉しそうに頷いた。
お風呂を済ませると、夏挽沅は一日の疲れが少し洗い流されたような気がした。