第44章 没骨画

「約束通り会いに来たのはあなた？！」

鐘微は、あまりにも美しすぎる女性を少し信じられない様子で見つめていた。

「はい、鐘先生。私の絵を気に入ってくださってありがとうございます」

夏挽沅は卑屈でもなく傲慢でもなく、とても堂々と認めた。

鐘先生の後ろにいた李念は、夏挽沅を見た瞬間から驚きを隠せなかった。目の前の人物は、毎日彼女と連絡を取り合っていたWeChatのアイコンの女性ではないか？まさか、恩師がこれほど称賛していた国画の大家が、こんなに美しく若い女性だったとは？！

「本当に信じられないことです」鐘先生は年齢を理由に他人の能力を疑うような人ではなかった。そうでなければ、かつて成人したばかりの君時陵と忘年の交わりを結ぶこともなかっただろう。

しかし李念が持ち帰ったあの絵を見たとき、彼は30〜40年の修練なしには描けないものだと思っていた。

「今日は夏お嬢さんに一枚絵をいただけないでしょうか？」

結局、鐘先生は慎重に切り出した。彼は専門家ではないが、長年収集品を集めてきた彼の目は確かだった。あのような熟練した筆致がこんなに若い手から生み出されたとは、少し信じがたかった。

「もちろんです」挽沅は鐘先生の疑いを理解できた。

厳密に言えば、彼女は前世から数十年分の余分な時間を持っていたのだから。

王おじさんはすぐに上質な筆と墨、紙、硯を用意させた。挽沅は足が不自由だったので、王おじさんは芝生の上にテーブルを運ばせた。

挽沅は筆を取ると、まるで気ままに二、三筆描くかのように、リラックスして落ち着いた様子で紙に描き始めた。

まだ絵の内容は見えなかったが、挽沅のこの悠然としたリラックスした心持ちを見ただけで、鐘先生は頷いた。絵を描くのに必ずしも戦場に向かうかのように厳粛である必要はない。

絵の境地と人の心境は一致するもので、緊張すればするほど、創作される作品は期待に沿わないものになる。挽沅はまだ若いのに、このような心境を持っていることに、鐘先生は一目置いていた。

鐘先生の予想に反して、挽沅は下書きをせず、直接顔料を含ませて描き始めた。鐘先生は好奇心から近づいて見ると、瞬時に目を奪われた。

挽沅が描いていたのは桃の花だった。筆先に墨を含ませ、墨、色、水、筆を一体として、紙の上で巧みに結合させ、意味を重視し、勢いに従って筆を運んでいた。