第72章 夏お父さんとの交渉

夏挽沅は夏家の会社に着いた。君氏グループのような財力はなく、夏家の会社は帝都の五環内にあるオフィスビルを借りていた。

しかし帝都では、一棟丸ごとオフィスビルを借りられるということは、かつての夏家がかなり裕福だったことを物語っていた。

だが今の会社内は寂れていた。会社が破産宣告をしたため、多くの従業員はすでに別の道を選び、かつては活気に満ちていた会社も、今では所々に残った従業員が自分の荷物をまとめ、去る準備をしているだけだった。

「挽沅？」

夏お父さんがオフィスに着き、ドアを開けると、あの特徴的な顔がなければ、これが自己の飾り物娘だとは信じられなかっただろう。

挽沅は黒い短めのケープジャケットに、柔らかい黄色のベルベットのひざ丈スカート、黒いロングブーツを合わせ、全体的に冷艶な雰囲気を醸し出していた。

さらに夏お父さんを驚かせたのは、挽沅から放たれる自信に満ちた強い気迫だった。彼はビジネスの世界で長年過ごし、人を見る目には自信があったが、今、この娘から上位者のオーラを感じ取っていた。

もしかして近朱者赤というのは本当なのか？君時陵と結婚したことで、娘にこれほどの影響があるとは。

「うん、こっちに座って」

挽沅は結局「お父さん」と呼ぶことができなかった。元の持ち主の父親は弱気で偏愛があったものの、元の持ち主には悪くなかった。しかし、この体の中の魂はすでに千年前の夏挽沅に入れ替わっており、彼女はどうしても口にできなかった。

「あなた、私に何か用があるの？」夏お父さんは少し躊躇いながら挽沅の前に座った。彼は自分の娘が何か違うように感じ、少し怖くさえあった。

「夏家は破産したんでしょう、私が夏家に資金を注入することができるわ」

「本当か？挽沅、君少が私たちを助けてくれるのか？」挽沅の言葉を聞いて、夏お父さんは喜びを隠せなかった。君時陵は挽沅を特に嫌っていたのではなかったか？もしかして挽沅は本当に君夫人の地位を固めたのか。そう考えると、夏お父さんの挽沅を見る目はさらに熱を帯びた。

「彼じゃないわ、私自身よ」夏お父さんの目がどんどん輝くのを見て、挽沅は続けた。「でも条件があるわ」

「どんな条件だ？」夏お父さんは固まった。

「あなたの全ての株式を私に譲渡してほしいの」