夏挽沅は驚いて君時陵を見つめた。君時陵の指が素早く動き、簡単に敵を倒すのが見えた。
小寶ちゃんが君時陵のプレイを覗き込もうとしたが、君時陵の手に阻まれた。「お前の目には良くない。見ちゃダメだ」
「ふん、意地悪パパ、見なければ見ないわ」小寶ちゃんは口を尖らせ、君時陵に背を向けて座り、パパを無視した。
「あなたもこのゲームをするの?」どう見ても、時陵はプライベートでゲームをするタイプには見えなかった。
「しない。初めてだ」君時陵はそう言いながら、すでに挽沅の戦績を9-7まで引き上げていた。それまで挽沅を罵っていたチームメイトたちも、黙り込んでいた。
「すごいね」挽沅は感嘆の声を上げた。知能指数の高い人は、何をやっても本当に優れているものだ。
挽沅の称賛を受け、そして挽沅が傍で見ていることもあり、時陵は表情を変えなかったが、操作はさらに鋭くなり、相手チームを降参させるまでに至った。
「本当にすごい」スマホ画面に表示された「勝利」の文字を見て、挽沅の目元には笑みが溢れていた。時陵が顔を向けると、笑いに満ちた挽沅の鳳眼と目が合い、息が詰まった。
「私のアカウントをあなたに渡すから、暇なときに代わりにプレイしてくれない?」
言葉を口にした瞬間、挽沅は少し違和感を覚えた。最近、時陵との付き合いが少し気安くなりすぎているような気がした。このような頼み事は、多忙を極める時陵にとっては、そもそも無理な要求だろう。
「本当にいいのか?」
時陵はこの言葉を聞くと、挽沅をじっと見つめ、その眼差しには挽沅には理解できない深い思いが宿っていた。
「もし気にしないなら?」挽沅は時陵の態度に少し戸惑いながらも、彼の言葉に合わせて返した。
「時間があれば代わりにプレイしてやる」挽沅の予想に反して、時陵はすぐに承諾した。
「WeChat(微信)のパスワードを教えてくれ」時陵は自分のスマホを取り出し、ゲームをダウンロードし始めた。
こうして、君さまのスマホには普段数個のアプリしか入っていなかったが、新しい仲間を迎えることになった。
数百ギガの高性能スマホが、ようやく少しだけ活躍する場を得た。