第347章 死にたがる人はいつもいる

「時陵お兄さま、来てくださったのね！」

絶世の美しさを持つ君時陵を見て、鄭菲の目が輝いた。

念入りに着飾った菲は、まるで一匹の蝶のように、時陵の前へひらひらと舞い降りた。

「鄭委員のお嬢さんは本当にしつけがよろしいですね」時陵の冷たい声が響き、彼の視線は前方に固定されたまま、菲には一瞥もくれなかった。

時陵の不機嫌な様子を見て、鄭偉業はすぐに菲を叱りつけた。「菲菲、下がりなさい」

「時陵お兄さま…」菲の悔しげな声が響き、目には涙が浮かんでいた。

前回、彼女は時陵によって警察署に送られ、長い時間を経てようやく出てきたのだ。

幼い頃から周囲に甘やかされて育った彼女は、こんな屈辱を受けたことがなかった。しかし母親は時陵がいかに優秀か、また調査の結果、彼がまだ結婚していないことを知り、安心して追いかけるよう言い聞かせていた。まさか時陵がこれほど風情を解さない人だとは思わなかった。

「我が君家はこの世代、一人っ子でして、妹などおりません。鄭委員はお仕事でお忙しいでしょうが、お子様の教育をおろそかにしないでください」

その場にいた全員が時陵の言葉の意味を理解した。鄭菲の一族は顔を上げられなくなったが、他の分家の者たちは心の中で菲を嘲笑していた。周囲の嘲笑の視線に気づいた菲は、面目を失い、すすり泣きながら大広間から走り去った。

時陵は前に進み、自然と広間の主席に座った。

鄭家の若い世代の者たちは、時陵が中央の席に座るのを見て、驚きの表情を浮かべた。

ただの金持ちの実業家に過ぎないのに、どうしてこれほど多くの高官の前で主席に座る度胸があるのだろうか。

「君社長、はじめまして。鄭雲と申します。かねてより君社長のご高名は伺っておりました。若い世代の中でも傑出した方だと聞いていましたが、今日お会いして納得しました。妹は無知で申し訳ありません。君社長は彼女より年上なのですから、あまり気にされないでください」

雲は鄭家の若い世代の中で最も我慢できない性格の持ち主だった。普段から可愛がっていた妹が時陵に公衆の面前で辱められたことに、心中穏やかではなかった。

幼い頃から権力の渦の中で育った彼らは、金持ちの実業家など恐れるに値しないと思っていた。