第138章 美人と駿馬

夏挽沅はチャーリー王子の言葉を聞いて、美しい眉を寄せた。

華国は長い歴史を持ち、遠い昔、交通が不便だった時代には、人々の移動手段は馬に乗ることだった。さらに大量の馬を訓練して軍馬として使い、軍隊の戦闘能力を高めていた。

千年前の夏朝でさえ、すでに形成された騎兵隊があった。

この鷹國は、華国の歴史の半分にも満たない。華国の文明が華やかに開花していた頃、彼らはまだ生肉を食べ、生水を飲んでいたというのに、今では馬術で優越感を示そうとしている。

「チャーリー王子、あなたの馬術が素晴らしいと聞いていますが、私があなたと一戦交えさせていただく栄誉をいただけますか？」

君時陵がまだ何も言わないうちに、挽沅はゆっくりと口を開いた。

その場にいた全員が驚いて挽沅を見つめた。

君時陵と林靖を除いて、他の全員が信じられないという表情を浮かべていた。

チャーリー王子が君時陵の前でこのような優越感を持つのには理由があった。

ここ数年のヨーロッパ馬術選手権で、チャーリーは個人部門で連続してチャンピオンの称号を獲得し、さらに鷹國を代表して世界的な馬術競技にも出場し、素晴らしい成績を収めていた。

世界的に見ても、チャーリーの馬術はトップクラスだと言えるだろう。

そして今、君時陵が連れてきたこの水のように柔らかそうな女性が、チャーリーと競い合いたいと言い出したのだ。皆は挽沅が自ら恥をかこうとしていると思った。

チャーリーは君時陵が自分の妻を自分と競わせることに同意するはずがないと思っていた。

これはプライベートな活動とはいえ、一方は華国経済の大動脈を握る人物、もう一方は世界の強国の皇太子である。

言わば、それぞれが自国の面目を背負っているのだ。チャーリーは、君時陵が弱々しい女性に無謀なことをさせるはずがないと確信していた。

「いいだろう、君が私の代わりにチャーリー王子と一戦交えるといい」しかし予想外にも、君時陵は挽沅をじっと見つめた後、彼女の提案に同意した。

「君さん、それでは私が女性をいじめることになりませんか？やはり私たち二人で競いましょう」チャーリーは実際に君時陵に勝とうとは思っていなかった。ただ技術を見せびらかした後、君時陵の顔を立てて引き分けにするつもりだった。

今、君時陵が直接自分の妻に競わせるというのは、明らかに負けを覚悟しているのではないか？