第112章 来たよ来たよ

もうすぐ一時になろうとしていた。真理子は近くを何周も回って戻ってきたが、座っていても居眠りしそうになるほど待っても、待ち人はまだ来なかった。

大崎健太はむしろ落ち着いて座っていられたが、それも真理子が彼に『春秋』の絵本を持ってきてくれたおかげだった。彼は夢中になって読みながら、真理子に言った。「辛抱強くね。県庁所在地から莞市までは遠いんだ。バスだと六、七時間かかる。でも彼らは軍のジープで来るし、大表兄の部下たちは命知らずの連中だから、山道でも飛ばして三、四時間で着くはずだよ」

話が終わらないうちに、遠くから二台の同じ軍用ジープが走ってきて、あっという間に大きな榕樹の下に到着し、路肩にぴたりと停車した。

真理子はぴょんと飛び上がり、健太の手から絵本を奪い取って、急いで言った。「早く!来たわよ、来た!」

健太は車を見て興奮し、手を伸ばして真理子を抱え込み、彼女を脇の下に挟んで杖代わりにして立ち上がり、数歩足を引きずって、車のドアを開けて降りてきた人に向かって叫んだ。「兄さん……」

黒田俊均に対してだけ、健太はこんなに心から「兄さん」と呼ぶのだった。俊均が彼よりたった二歳年上であっても、そして俊均と一ヶ月しか違わない黒田俊峰のことは「次男」としか呼ばなかった。

これが二人がお互いを見て気に入らない理由でもあった。

真理子は健太に体を支えられ、長袖のセーターを着た腕で頭を締め付けられて視界を遮られ、思わず呆れて怒った。こいつ、演技が上手いんだ。あれだけ飛来峰の野ぶどうを食べ、さらに空間の中で一晩置いて霊気をたっぷり吸収したクッキーも食べたのに、足はもうそんなに痛くないはずなのに、こんな厚かましく甘えて同情を買おうとするなんて!

彼女は健太の腕を力強く引き下ろし、目の前に立つ二人の美男子から目を離さなかった。

黒田家の兄弟たちと、黒田家で育てられた甥の大崎兄弟は、前世でも真理子と会ったことがあった。顔立ちだけで言えば、皆抜きん出ていたが、その中でも常に軍隊に勤めていた次男の俊峰が極上だった。一方、俊均はあの戦争で敵のロケット砲が掩体に命中し、重傷を負って障害者になり、横顔に二本の傷跡があったが、それでも彼の際立った容姿に影響はなかった。