日曜日の朝、黒田俊均は大崎健太からの電話を受けた。
健太は郵便局に行かなくなり、今は軍区に行って谷村参謀の電話を借りていることを知っていた。
「鎌太、どうだった?昨日の道中は大丈夫だった?真理子を家まで送り届けたか?」
「何があるっていうんだよ?兄貴は俺の運転技術を知らないのか?3時間もかからずに家に着いたぜ。道路状況も良くて、特に危険な場所もなかった。隣のおばあさんが揺れに耐えられなかったから、もっと速く走れなかっただけさ!あ、兄貴、あの子が真理子って名前だって知ってたのか?あいつ、小さな詐欺師だよ。俺、騙されたんだ!」
黒田は笑いを堪えた。「勝手に人の名前を変えるな。彼女はそれを嫌がっている。道順とあの村を覚えたか?」
「覚える必要なんてないよ!あの村は公道のすぐ脇にあるし、真理子の家の環境はなかなか良かった。少し高台にあって、前の塀を取り払えば見晴らしがいい。家の中庭は広くて清潔で、庭があって、花や野菜を育てていて、あの青菜がめちゃくちゃ美味しくて...大きな梨の木もあって、来年の7月には梨が食べられるし、黒い子豚も2頭飼っていて、来年の春節には豚を屠るんだって...」
黒田は違和感を覚えた。どうしてこの小僧はいきなりおしゃべりになったんだ?それに、今年の春節もまだ過ぎていないのに、来年のような遠い将来のことを気にかけるなんて、お前はそんなに暇なのか?
「重要なことだけ言え。彼女の家族は元気か?真理子は孤児で...」
「そうそうそう!これも兄貴に相談したかったことなんだ。真理子は孤児で、外から拾ってきて育てられたんだ。最高じゃないか!」
黒田は言葉を失った。大崎健太、お前は殴られたいのか。
「兄貴、聞いてる?」健太は興奮して続けた。「考えたんだ。真理子を東京に連れて帰りたい。錦一も妹ができて喜ぶはずだ!彼が嫌がっても、俺一人で養っていける!」
黒田は眉をひそめた。「お前が心配することじゃない。あの二人のお年寄りは何歳なんだ?」
「ああ、会ってないんだ。真理子はおじいさんとおばあさんがどこに行ったのか言わなかった。こっそり隣のおばあさんに聞いたら、真理子のおばあさんは何年も前から目が見えなくなっていて、数日前におじいさんがおばあさんを連れて県庁所在地の目の治療に行ったそうだ。どの病院かは分からないけど。」