第191章 ひいき目

しかし、まだ夜は明けておらず、どんなに恐ろしい悪夢でも続くしかなかった。

十数人が囲炉裏を囲んで食事をする様子を田原雅子は見なかった。彼女は凍え死んでもいいと思っていた。汚くて臭い人たちの中に加わりたくなかったのだ。

安部鳳英はもちろん雅子を寒さと空腹のままにしておくつもりはなかった。佐藤国松と小声で話した後、国松は豚小屋に行き、普段子豚に餌をやる古い陶器の洗面器を取り出して綺麗に洗い、それから鉄のシャベルで炉から熾き火をたっぷり掬い、堂屋に座っている雅子の側に持っていき、暖を取らせた。鳳英は家の中で一番綺麗で欠けのない白い陶器の茶碗を探し出し、洗って熱湯で消毒し、ご飯とおかずを盛って雅子に手渡し、これは一番最初に盛った食事で、清潔だから安心して食べられると伝えた。

長い時間かけて説得し、やっと雅子はその茶碗を受け取った。彼女は本当は食べたくなかったが、お腹がとても空いていた。朝、県の招待所で吉田暁文の同情を引くために、お粥を二口しか飲まなかったので、今はもう空腹で目まいがするほどだった。白いご飯の上には金色に輝く腊肉が四切れ乗っていて、とても美味しそうに見えた。

彼女が知らなかったのは、台所で食事をしている人々には肉など全くなく、ただ大鍋の青菜だけだったということだ。この数切れの腊肉は鳳英が特別にご飯と一緒に蒸し、こっそり雅子に食べさせるために持ってきたものだった。

彼女が眉をひそめながら手の中の茶碗を見て、食べるか食べないか迷っているとき、枝里と花子が自分たちの茶碗を持って出てきた。雅子の茶碗の中の黄金色に輝く腊肉を見て、二人はすぐに驚いた。枝里は叫んだ。「うわぁ、あなた腊肉食べてるの!ママ、ママ!どうして私たちにはお肉がないの?」

花子はわっと大泣きした。「花菜にはお肉があるのに、私にはない……」

泣きながら雅子に駆け寄り、「お肉食べたい、お肉食べたい!」とせがんだ。