吉田暁文は田原雅子を学校に送った後、帰りに真理子の家の前で車を止めた。彼女は決して庶民の娘ではなく、プライドの高い女性だった。おばあさんにあれほど面子を潰されたのだから、しばらくは自分から近づくことなどできるはずもなく、ただ冷たい表情で車の横に立ち、運転手に家に入って田原青雲を呼び出すよう指示した。そして青雲と誠一に一緒に莞市へ戻るよう要求した。
田原青雲は外に出て暁文と言葉を交わしたが、彼女についていくことはなかった。母親が遠くからわざわざ来てくれたのだから、少なくとも二日は一緒に過ごすべきだと思った。今夜もまだ村に泊まり、明日は藤本さんが車で迎えに来て平田県へ連れて行く予定で、明後日には母と兄が東京へ帰るという。
誠一は明日から学校が始まるため、莞市へ行くことなどできなかった。
暁文はまたもや冷たく拒絶され、悔しそうにドアを閉めて車に乗り込み、一人で莞市へ戻った。道中、考えれば考えるほど悲しくなり、涙が止まらなかった。
家の中では一同が昼食を取っていた。おばあさんが外に出て様子を見てから戻り、田原おばあさんに言った。「誠一のお母さん、本当に怒っていますね」
田原おばあさんは真理子と誠一にそれぞれ手羽先を取り分けながら言った。「怒るでしょうね。私を恨んでいるだけよ。彼女に反省を期待できるかしら?心がゆがんでしまっているから、私たちとは分かり合えないわ」
戻ってきて食卓に座った青雲を見て、田原おばあさんはさらに言った。「あなたは昔、反抗的で手に負えず、私をひどく悩ませたけれど、それでもあなたを見捨てるなんて言ったことはないわ。なぜあなたたちは、傷つき、醜くなった真理子を私が受け入れないと思うの?たとえ遠い親戚でも、私と関係のある人が困っていれば、見て見ぬふりをする理由なんてない。まして実の孫娘なのよ?青雲、あなたは私の子なのに、お母さんのことをそんなにも分かっていないの?」
青雲は頭を垂れた。「お母さん、私は...その時はお母さんの健康を考えて、また怒らせてしまうのが怖かったんです。赤ちゃんの取り違えなんて、本来起こるべきではないことで、私たちがお母さんが派遣した医者を避けたからこんな結果になったんです。お母さんは元々暁文のことが好きではなかったし、この件でまた怒り出したら、お互いに傷つくだけだと思って...」