第二百十六章 婚約解消
田原青山と田原おばあさんが東京に戻ると、田原邸はにわかに賑やかになった。電話で知らせる必要もなく、黒田家の老若男女がほぼ総出で訪れ、その他の親しい友人や近所に住む親戚たちも噂を聞きつけて、次々と様子を見に駆けつけた。
黒田お婆様は五、六日も姉妹に会わないと当然ながら心配になり、ついでに南部から何か良いものを持ち帰ったか気になって、長男の嫁である福永慧蘭は真理子の様子が知りたくて、姑と嫁は真っ先に黒田俊鎮に送ってもらった。田原おじいさんと田原おばあさんは夕食会を開くことにし、連絡を回したところ、さらに多くの人が集まってきた。
老若の女性たちが大量の特産品を囲んで珍しそうに眺める中、俊鎮と大崎誠一は青山を手伝って写真フィルムを現像し、大量の写真が出来上がると、皆が争って見ては南部の山の美しさ、水の美しさ、風光明媚な景色を絶賛し、例外なく真理子のおじいさんとおばあさんの家にある青々と茂り実りの多い菜園を羨ましがった。黒田お婆様は写真の中で田原おばあさんが菜園で瓜を摘んだり野菜を収穫したり、大きなバラの壁を剪定したり、長い柄のスプーンを持ったり、ざるを抱えて二匹の黒豚と一群の太った鶏に餌をやる楽しそうな様子を見て、羨ましさと嫉妬で大声で叫び、田原おばあさんについて行かなかったことを後悔した。さらに大崎健太の写真を手に取り、たくましく引き締まって笑顔が輝く孫を見て、黒田お婆様は直接涙を拭いながら写真に向かって「私の可愛い孫よ」と叫び、皆を大笑いさせた。