彼女が牛と7、8歩離れた場所からキャンディーを投げようとしたとき、強い腕に抱きとめられ、広く温かい胸に引き寄せられた。軽い叱責の声が聞こえ、彼女を抱きしめた人が気を集中して攻撃の準備をしているのを感じた真理子は急いで注意した。「あれは耕作用の牛です、殺さないで!」
白石俊帆も素早く反応し、真理子の言葉を聞いて掌の気を消した。しかし牛も黙って待っているわけではなく、瞬時に目の前まで突進してきた。俊帆は長い腕を軽く伸ばし、柔らかな力で真理子を危険地帯から押し出すと、素手で大きな水牛の両角をつかんだ。牛に3、5歩押し戻されたが、足場を固め、牛をしっかりと制止した!
周囲は静まり返った。人民解放軍が素手で暴れ牛を制圧する光景に皆が驚いていた。しかし、さらに恐ろしいことに、もう一頭の牛が走ってきていた!
真理子の目から見れば、この勇敢で威厳のある解放軍兵士は本物の武術の持ち主だった。彼も古武を修行しており、その武力値は黒田俊均に劣らないかもしれない。
だから彼女は緊張せず、静かに脇に立って俊帆が身軽に最初の牛から離れ、勇敢に二頭目の牛の前に立ちはだかり、同じ方法で素手でその牛も制圧するのを見ていた。
数人の農民が汗だくで走ってきて、何度も頭を下げ、手を合わせて感謝した。俊帆は水牛を返す前に、彼らを厳しく叱り、今後このようなことが起きて人が傷つけば誰にとっても良くないと警告した。
農民たちは何度も感謝し、牛を連れて去った。
人々は次々と集まり、危険を取り除いた解放軍兵士に熱烈な拍手を送った。
俊帆は人々に微笑みながら頷くだけで、真理子の前に来て申し訳なさそうに言った。「さっきは緊急だったので、力が強すぎたかもしれない。怪我してないか?病院で診てもらった方がいいかな?」
真理子は首を振った。「大丈夫です、ありがとうございました!」
俊帆は彼女をじっと見つめた。「なぜ牛が来る方向に走ったの?」
「慌ててしまって、間違えました。」
「そうか、今後このような緊急事態に遭遇したら、周りが混乱していても慌てないこと。心を落ち着かせれば、間違いは少なくなる。覚えておいてね?」
「はい、解放軍同志のご指導ありがとうございます。」
俊帆は微笑んだ。「どういたしまして。実は学生さんにお願いがあるんだ。」