第273章 あなたのものではない（二合一）_2

「あなた……」吉田暁文は黒田俊均の冷静で冷たい表情を見て、何も言えなくなった。

田原雅子は泣きながら言った。「均兄さん、私があなたの婚約者だってみんな知ってるわ。こんなに長い間、あなたは私を大切にして、守ってくれたのに、今は……おじいちゃんやおばあちゃんみたいに冷たくなって、花菜を捨てるの？」

「花菜、これまで僕が君にどう接してきたにせよ、色々と気にかけたり守ったりしたのは、君が田原家の娘という肩書きを持っていたからだ。婚約を守ってきたのもそのためで、俊均が娶るのは田原家の娘であって、君ではない。君は単なる間違いだ！今や本当の田原家の娘が戻ってきた、彼女こそが僕の婚約者だ。君も心の中ではわかっているはずだ、君と僕の間には何の関係もない！」

「違う！わからないわ！」雅子は涙でぐしゃぐしゃの顔になり、目も開けられないほどだった。「あなたは私にとても優しかったじゃない、私が何を好きで何が嫌いかも覚えていて、毎年の誕生日や季節の行事にはいつもプレゼントをくれた。私たちの間の感情はとても本物だったのに……あなたが真理子を好きになるはずがない、ただ、ただ……均兄さん、家柄や身分がそんなに大事なの？ああああ……ごほっ、ごほっ！」

「まあまあ、落ち着いて、ゆっくり話して……」暁文は片手にハンカチを持って雅子の涙を拭き、もう一方の手で彼女の背中をやさしく叩いて必死に慰めながら、俊均を非難するような目で見た。まるで彼が雅子を傷つけたことを責めているようだった。

俊均は無表情のまま、心の中で暁文に対して完全に絶望し、真理子が彼女と距離を置くことを全面的に支持していた。こんな母親を見るのは辛いから、いないほうがましだ。