母娘二人は吉田邸を出て、道路の角までやってきてタクシーに乗り込んだ。田原雅子は吉田暁文に言った。「お母さん、私が勝手に電話番号や住所を漏らしたわけじゃないの。安部鳳英さんが言うには、真理子お姉さんが教えたんだって!真理子お姉さんがどうやってお祖父ちゃんの家やお母さんの職場の電話番号、それに私の学校の住所を知ったのか分からないわ。いつも私たちと関わりたくないって言ってるくせに、こういうことを聞き出すなんて、何がしたいのかしら?」
「何がしたいって?私の邪魔をしたいだけよ!真理子はね、私たちを敵だと思ってるの。心が歪んでる。いずれ悪い子になるわよ!」
暁文は唇を引き締め、目を細めた。「それに安部鳳英も、本当にひどい!私たちを騙しただけでなく、欲深くしつこく付きまとってくる。彼女にはまだ育てなきゃならない子供たちがいるから見逃してるけど、そうじゃなかったら、お父さんは彼女も刑務所に入れて、一生閉じ込めたはずよ!あなたは気にしなくていいわ。遠く離れてるんだから、彼女にどうこうできるわけないでしょ?」
「でも彼女がずっとこうやって電話してくるなら、お母さんや、お祖父ちゃんの家に影響が出るんじゃないかって…」
「大丈夫よ。私の方法で話をつけて、オフィスの電話を止めて、しばらくしたら番号を変えるわ。お祖父ちゃんの家は気にしなくていいわ。お祖父ちゃんは普段学校にいるし、家の電話はあまり使わないから。田舎から来たあの子たちが電話に出るのが好きでしょ?彼女たちに出させておけばいいわ。嫌になったら、自分で番号を変えればいいのよ!」
「ああ、そうね」雅子はほっとして、安部鳳英が学校に手紙や電報を送ってきたことを暁文に話さなかった。
母娘が家に戻ったのはもう9時近くだった。やっとのことで数階分の階段を上がって自分の家のドアの前に着き、鍵を取り出してドアを開けると、ドアの隙間からディスコミュージックが聞こえてきた。暁文の顔色はすぐに曇った。今日は土曜日で週末の夜だと思い出した。暁蕾が他人の家で遊び回っていなければ、自分の家に一群の人を連れてきて騒ぎ、夜中まで騒ぎ続けるのだ。今夜は…