第72章 危機感がますます強くなる

田口優里は仕事に白衣を着て、今は妊娠しているので、当然快適な服装を選んでいる。

白いTシャツにジーンズ、白いスニーカーという爽やかな姿は、まるで高校生のように見える。

田口優里は芸能人に詳しくないが、亀山直之は国民的スター、二冠の映画俳優なので、もちろん名前は聞いたことがある。

しかし、実際に会うのは初めてだった。

紹介が終わると、松下陽介は無駄話をせず、直接聞いた。「優里、直之は大きな問題はないんだけど、ずっと咳が続いているんだ。どうなのか診てもらえる?」

亀山直之は彼女が植物状態の患者を治療すると聞いて少し信頼できないと感じ、さらに彼女がこんなに若いのを見て、期待はさらに薄れた。

今夜の出会いを単なる友人との集まりとしか思っていなかった。

しかし田口優里は彼を一目見ると、表情が真剣になった。「脈を診てもいいですか?」

亀山直之は笑って言った。「実は大した問題じゃないんです。咳も冷房の効いた部屋にいるせいで…」

「違います」田口優里は首を振った。「あなたの肺に問題があります」

亀山直之は一瞬驚き、続けて言った。「以前CTやMRIを撮りましたが、肺には問題ないと言われました」

野井北尾が横から口を挟んだ。「そんなこと言わずに、まず優里に脈を診せてみろよ——私の妻はすごく腕がいいんだ!」

彼が誇らしげな表情をしているのを見て、亀山直之は苦笑いしながら手を差し出した。

田口優里が彼の脈を診ると、徐々に眉をひそめていった。

亀山直之の顔色に特に問題はなく、唯一唇の色が少し薄いだけだった。

しかし手を取った瞬間、田口優里は良くないことを悟った。

中医学では陰陽虚実の弁証法をよく用いるが、亀山直之の脈は力強く、触れた感じでは問題がないように思えた。

しかし心を静めると、脈動の末端に小さな震えがあることがわかった。

これは肺実腎虚の明らかな兆候だった。

亀山直之の肺の症状はまだ軽く、咳として現れているだけで、検査をしても肺には全く問題が見つからない。

それは今、腎臓が肺の代わりに負担を引き受けているからだ。

腎臓がもう耐えられなくなれば、肺には盾がなくなり、おそらくすぐに一連の症状が現れるだろう。

その時CTを撮れば、確実に問題が見つかるはずだ。

田口優里が黙っているのを見て、他の三人も思わず緊張し始めた。